七種茨短編
七種茨
名前
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「バリ~!おっはよ~」
ここ最近の名前の楽しみはクラスメイトの七種茨へ嫌がらせをすることだったりする。隙のない彼をからかって遊ぶなんて無理だと思っていた彼女だが、trickstarと交流したその日、彼女は茨のウィークポイントに気付いたのである。明星スバルが茨のことを「バリ~」と呼んでいたのを聞いて、これを使わない手はない。と確信してから度々茨のことを渾名で呼ぶようになったのである。お察しの通り、冒頭の台詞は2年S組に登校してきた名前のものだ。その声を聞いて呆れたように茨は息をつき、名前を見据えて文句を言う。「その呼び方やめてくださいって何度も言ってるでしょう?」と。「某ゆるキャラみたいで可愛いのに…」と言い返す彼女は席に座る彼に近付いて後ろから頬を両手で包み込んだ。その手は氷のように冷たく、茨は肩を揺らして反応を示した。今日は一段と名前からの嫌がらせが酷い。いつもなら渾名呼びで嫌がらせをされ面白がって笑われるだけなのだが…。そんなわけで、茨の嗜虐心に火をつけたのは名前のせいなのだ。わけも分からずに彼女は手を引かれ、空き教室に連れ込まれた。もうすぐホームルームが始まってしまうと名前の心配をよそに、茨は手を握ったまま離してくれなかった。
「名前って、手冷たいし冷え性ですよね。俺が温めてあげてるんだから、じっとしててくださいよ」
「茨は手があったかいから、心が冷たいということだよね」
「私は心が温かいから手が冷たいだけ」とドヤ顔で告げるが、茨は楽しげににやりと笑みを浮かべて、薄暗い部屋で彼女を抱き竦めた。「自分に嫌がらせしてくる時点で心温かくないでしょう?馬鹿ですか」と行動と言動がまるで合致していなかった。「離してよ変態」と身動ぎして文句を言うが、彼は離してくれる様子もなく、より一層強く抱き締められて名前は口を噤んだ。茨の腕の中がこんなに温かくて心地がいいだなんて知りたくなかったのだ。離してほしいのに離れたくない。なんて矛盾した思考回路に陥ってしまった。「こんなのいつもの茨じゃない」と苦し紛れに呟けば、ホームルーム開始のチャイムが響いた。「名前の知ってる、いつもの自分はこんなことしませんか?」と彼女の顎が掬われ唇が重なり合った。まさか唇まで冷えきっているなんて…と彼は深いキスをしようとしたが胸を押し返す手に気付き、我に返ったのか唇が離れていった。
「私の知ってる茨は、私なんか相手にしない」
「そんな自己卑下することないでしょう?嫌がらせしてくる名前が可愛かったので相手にしなかっただけですよ」
再び彼女を腕に抱いた彼は、耳元に唇を寄せて告げる。「自分に嫌がらせされている名前も中々可愛いので、とことん虐めさせて頂きますよ」と、抵抗出来ないほど甘く深い口付けが落とされた―
END