七種茨短編
乱凪砂
名前
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―「うちの閣下が随分とあなたのところに顔を出しているようで…」とお仕事の邪魔をしてすみませんみたいなことを謝罪してくれるが、そんなこと絶対思っていないだろうし…彼、七種茨からすれば私は目障りな存在なのだろう。顔が綺麗なわけでもなく、能力が優れているわけでもない女に乱凪砂ともあろう方が何故固執しているのかわからない。確かに、隣の家に養子として引き取られた凪砂くんとは面識があるけれど。そんなに懐かれていた覚えはないし…なんて、コーヒー片手に休憩スペースの椅子に座れば、飼い主を見つけた子犬のように駆け寄ってきたのは彼で。
「よかった。今日は名前さんに会えないかと思った」
「あれ?今日はEdenお仕事が入ってた筈じゃ…」
「収録はもう終わったから。それに、ここに来たら会えるかもって期待してたんだ」と、メディア向けの乱凪砂の喋り方ではない。昔の純粋無垢な彼ではなくなってしまったわけではなさそうだ。こんなにかっこよく成長した相手を可愛いなんて思うのは滑稽かもしれない。しかし、彼は歳下であるし、懐いてくれている可愛い存在に変わりない。おやつで持ってきていた手作りのパウンドケーキをあげるとパァっと笑顔になるのがまた可愛い。支配者キャラの凪砂様がこんなに癒し系で可愛いなんてきっと誰も知らないんだろうな。と、少し優越感に浸ってケーキを一口頬張る。
「この前、帰り道送ってくれてありがとうね」
「女性の独り歩きは物騒って茨が言ってた。それに、少しでも名前さんと一緒にいたいから」
え、凪砂くん口説いてる?なんて浮かれるのはやめよう。と、残り少なくなったコーヒーを飲み干した。彼は下心とかなしにそう言ってくれているのだ。ストレートすぎて戸惑わされるけど。「今夜も一緒に帰ろう」と提案してくれるのはありがたいが、本日は合コンに参加する予定なのだが…。そんなことは口が裂けても言えないな。と、やんわり断った筈だったが、帰りがけに凪砂くんに遭遇してしまい…いよいよまずい事態に。「名前さんも合コン行くんですよね~?」と、同僚の女の子から声をかけられ、タイミング悪く凪砂くんに聞かれてしまったのだ。
「名前さん。合コンに行くの?」
「いや~。人数合わせでね…」
「だめ。名前さんは私のだから」
いつから私は凪砂くんのものになったんだ。あ~視線が痛い。特に七種副所長の視線が。うちの閣下を誑かしてんじゃねぇよ。的な圧力を感じる。でも本人は全く気にしていないようで、手を握ったまま離してくれない。「名前さんの手料理が食べたいな」と、可愛い凪砂くんのお願いに私はとことん弱く、結果的にお持ち帰りしてしまったわけだ。
END