七種茨短編
乱凪砂
名前
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-全ての始まりは、駅前で配っていたサンプルのビスケットを食べたことによる。駅前でよく製菓会社が配っている為、何も問題はなかった筈だ。しかし、彼女の両手は今、紛うことなきもみじ手だ。某高校生探偵の漫画よろしく、体が縮んでしまった。これからEdenのレッスンがあるのに、どうしたものか…と頭を抱えていると部屋の扉が開き、乱凪砂が姿を現した。ここで、自己確認してみるが、思考は今までのままなので、体だけが小さくなってしまったらしい。これからどうしようと茫然自失していると、ふわりと体が浮き上がる感覚がした。目前に迫るのは、きらきらとした眼差しで自分を見つめる凪砂の綺麗な顔だ。「どうして小さくなってるの?可愛い」と、この見た目でも認識はされているようで少し安堵した。が、状況は何も変わらない。あれよあれよという間に、日和が手配してくれたであろう子供服に着替えさせられた。問題なのは、Edenには子供慣れしてそうな人物がいないということだ。
「見て。すごく可愛いんだよ」
「閣下が母性に目覚めてしまったようですし、子守りは閣下にして頂きましょう」
彼女を抱っこしたまま手放す気配がない凪砂を一瞥して、茨が判断を下した。「子守りって言うな」と反論すれば、「そのちんちくりんな姿を写真に収めておきましょうか」と勝手に写真を撮られ「毒蛇嫌い!」と彼女はぷいっと顔を背ける。「茨、嫌われちゃったね」と凪砂が頭を撫でて諌めていると、今度は日和の腕に抱かれた。「僕の妹になるといいね!それがいい日和!」とご満悦の彼の横からジュンが最もな台詞を呟く。「随分能天気ですけど、元に戻るかどうかの心配はしてないんすか?」流石とでも言おうか、その一言で少し救われた気分になった。「とりあえず、今日は私と一緒に帰ろうか」と凪砂に連れていかれた彼女はこの後、悶絶するしかなかった。
「お風呂に入るから、服脱ごうか」
「自分で出来るから!凪砂先輩は先に入ってて!」
ちんちくりんな姿とはいえ、凪砂と裸の関係になってしまう。と、彼女は彼の裸を直視しないように目を手で覆っていた。ちらりと見えた引き締まった体はフェロモンが溢れており、心臓に悪いとすら感じた。全身を洗われ、羞恥心で死んでしまいそうな思いの彼女に反して、凪砂は裸のまま彼女を抱いて湯船に浸かる。愛しげな眼差しで彼女を見つめる彼は、母性に溢れている。そして、突如異変は起こった。シュウゥと煙に彼女の姿が包まれ、気付けば元通りの姿で彼に抱きしめられているではないか。これはまずい。と彼女は浴室から逃げ出した。胸がドキドキと早鐘を打っている。服がないのでバスタオルを巻いて途方に暮れていると、後ろから彼女を抱き竦めた彼が耳元で囁く。「今夜は一緒に寝ようね」と。
「元に戻ったのに、添い寝はまずいでしょう」
凪砂は天然な部分がある故に、何がまずいのか分からないと言いたげに「なんで?」と問いかける。無邪気な瞳は期待に満ちており、躊躇うことが出来ない。この夜、彼女は凪砂の腕に抱かれたまま、眠れない夜を過ごすのだった…。
END