七種茨短編
巴日和
名前
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ー「暑いなら引っ付いてこなければいいんじゃない?」
「暑さよりも名前にくっ付いていたい気持ちのほうが強いからね!」
本日7月24日は巴日和の誕生日である。Edenのメンバーと共にサプライズパーティーを終えた現在。名前の腕には彼の腕が絡み、「外は暑いね!」というわりに距離は近く、暑苦しい。本日の主役のタスキを付けてご満悦の彼の代わりに、プレゼントの数々はジュンが車に運んでくれた。「アンタらこんなとこでイチャつかないでくれます?暑苦しいっすよ」と彼の言う事はごもっともだったが、「ジュンくん。僻んでるね!ぼくと名前がラブラブだから焼きもちだね!」とジュンを苛立たせる日和は面白がってにこにこしている。「おひいさんの相手は名前さんに任せますから」とジュンが去っていき、迎えの車に乗り込んだ彼らは現在、巴邸にいる。
「このプレゼントは誰から?」
「あ。それは…ファンの皆様から送られてきたもので」
Edenメンバーから貰ったもの以外の贈り物が入ったダンボールを部屋に運び、不思議そうに問いかけてきた日和に、彼女は答えるが、その後の言葉を聞いて日和は顔を顰めた。「日和くんは人気者だね。そんなにプレゼントいっぱいなら、私からのプレゼントなんていらないね」と。そもそも、御曹司である日和に、こんな普通の贈り物をしていいのか。という悩みを抱いていた彼女はシュンとした表情で俯き、ダンボール箱の前でしゃがんだまま動けなくなった。肩に下げている鞄の中には、まだ彼に渡せていない贈り物が入ったままだ。やはり、一般人の自分じゃ巴日和の隣に並ぶには相応しくない。そう思い込んだ名前は唐突な温もりに包み込まれたと同時に尻餅をついた。しゃがんでいた彼女に、おぶさるような体勢で抱き着いてきた日和が原因だ。
「ねぇ、名前。今日はぼくの我儘を聞いてくれるんだよね!」
「日和くんの我儘なんて、いつも聞いてるつもりなんだけどな」
手を引かれて何処に連れていかれるかと思っていれば、柔らかなベッドに背中が沈み、身動きがとれなくなった。瞳を開けば満面の笑みの日和が。状況を理解すればする程恥ずかしくなった。恋人の日和とは、まだキス以上のことはしていない。しかし、このシチュエーションならば、このままそういう関係になってしまうのも不自然ではない。そう覚悟を決めてシャツのボタンを外し始めた名前に、驚かされたのは彼である。「名前。暑いの?」と彼女が脱ぎだしてしまった事に瞠目し、目を背ける日和。ちらりと胸元が見えてしまい、何とも言い難い背徳を感じていた。「日和くんは、私とそういう事がしたいんじゃ…ないの?」だから、ベッドに誘導したんじゃないのか。と、肩透かしを食らったような気分の彼女は、天真爛漫な彼の台詞を聞いて力が抜けた。
「うんうん!名前をこうして抱きしめていたいし、キスだってしたいね!」
「日和くんの好きなようにしていいよ」
ぎゅっと抱きしめられ、彼の方から優しい口付けをされた彼女は考えることを放棄した。キス以上のことを体験してしまうかも。と、身構えていたのが馬鹿らしい。外していた胸元のボタンは、日和の手によって留め直された。胸元に手が伸びてきた時には、覚悟していたのだが、彼は予想の斜め上を行く人物だったようだ。野獣な一面もなく、自分を大事にしてくれる日和のことが酷く愛おしくて、名前のほうから唇が重ねられた。やがて、熱い舌が絡み合った濃厚な口付けに発展した。唇を離そうとするが、後頭部を彼の手で支えられた状態では離れるに離れられず。部屋には卑猥なリップ音が響く。
「んぅ、ァ…っ」
「いやらしい声だね!ぼくの名前は本当に可愛いね!」
酔わされるような深い口付けをして、漸く唇が離される。「プレゼントは名前の愛情っていうのも悪くはないけどね!名前のことだから、ちゃんと用意してくれてるんだよね?」と何もかもを見透かしたように日和が問いかける。真っ直ぐに視線を合わせられ、手を握られてもう逃げ場もなかった。用意した贈り物を鞄から取り出し、おずおずと彼の前に差し出す。「高価なプレゼントじゃなくてごめんね」と名前は不安げにそう告げるが、日和は既に気付いていた。月と太陽が描かれ、宝石が煌めく時計盤に、バングルは緑色で革製の腕時計。彼女が左腕に付けているものもバングルの色は違えど同じものだったのだ。「ペアウォッチだね!名前はセンスがいいね!」と彼は満足げだが、名前としては、こんなもので本当に満足してくれたのだろうかと信じられずにいた。彼女の心境など知る由もなく、日和は名前を腕の中に閉じ込めて告げる。
「日和くん。本当に満足してる?」
「勿論だね!だけど…今日という日が終わるまで、ぼくは名前を離すつもりはないね!」
「それは、夜を共にするっていう意味…?」
END