七種茨短編
巴日和
名前
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※この物語は、ジュンの姉と日和の続編となっております。
―日和との初対面で気に入られてしまった名前は、彼の断言通り共にバカンスに向かっていた。巴家の自家用ジェットに乗り込むと、隣に彼が座った。まるで飛行機のファーストクラスに乗っているかのように快適だ。だが、彼女は終始気遅れしていた。日和のユニットの相方である漣ジュンの姉とはいえ、一般庶民の自分が巴日和とバカンスに行くというのは許されるのだろうか…と。「目的地は秘密だね!そのほうが楽しいね!」と隣の彼はにこにこと笑顔を浮かべて名前の手をギュッと握る。気に入ってくれているが故か、日和による彼女へのスキンシップは積極的だった。いつも話しに聞いていたおひいさんに、実際に会ってみたら心惹かれてしまう自分がいる。その事実に、弟のジュンには合わせる顔がないと彼女は苦笑した。
「眠くなったら、ぼくの肩を貸してあげるね!名前だけは特別だね!」
「それじゃ日和くんが疲れちゃうでしょ?ネックピローを貰ったから大丈夫だよ」
そう返答しつつも、彼の肩に寄りかかってみる。「ジャストフィットだね!ずっとこのままでいればいいね!」と手にしていたネックピローは彼が脇の席に置いてしまった。離れようとするも、腕を掴まれており拒むことすら出来ず。鼻腔を掠めるのは彼から香る高貴なコロンの匂い。彼の感触が、温もりが…何だか安心して身を委ねたくなった。すると、名前の髪を優しく梳きながら日和が語りかける。「このままじっと聞いてほしいね。この前、父から許嫁の話題を持ちかけられた時、自然と名前の顔が浮かんだね!やっぱりぼくの許嫁に相応しいのは君しかいないね!」と。何気なく明かされたその話題に、名前は反応せざるを得なかった。日和の肩から頭を離し、彼のほうへ振り向く。そして、じっと彼を見据え彼女は問うた。「私なんか日和くんには相応しくないよ。可憐なご令嬢とは全然違うし、御家族だって認めてくれないと思う。なんで私なの?」と、頭ではわかっているのに、現実を素直に受け入れられない彼女の表情は悲しげに見えた。しかし、そんな彼女の憂いを吹き飛ばすように日和は唐突に抱き寄せた。
「ぼくの許嫁は、名前以外には考えられないね!家の者がなんと言おうと、ぼくは名前がいい」
そう告げて腕に力が込められる。「このバカンスだって婚前旅行のようなものだからね!」と彼は声を大にして言い切った。我儘な貴族気質の彼らしい言動といえばそうなのかもしれないが、彼女は彼の言動一つひとつに甘く心を乱されていた。住む世界が違うと、釣り合いがとれるわけがないと…理解しているが、話の当事者がこう言うのなら彼との婚約もあるかもしれない。と微かにだが、希望を抱いた。頬と頬が重なり合い、互いの体温が伝わってくる。彼のことを愛しいと、このまま添い遂げたいと願ってしまうのは…やはり自分は彼に惚れているのかと彼女自身薄々と自覚していた。暫く一緒に過ごしたからか、彼の性格をある程度理解している彼女は、この気持ちを言葉にすれば日和はきっと喜ぶ筈だと確信した。「夢みたいな話だけど、私が日和くんの許嫁になれたらどんなに幸せだろう…」と彼女が伝えると彼は予想通り嬉しそうに名前と視線を絡め口角を上げた。
「バカンス中は誰にも邪魔されないからね!思う存分名前と触れ合えるね!」
触れ合うという単語に夜の営みを想像した彼女は気恥ずかしさに頬を染めたが、彼から更なる追い討ちがかけられ、彼の顔を見ることが出来ずに顔を俯かせた。「名前はぼくからこんなに愛されて幸せ者だね!」と。彼の何気ない台詞は、本人は無自覚だが名前にとっては非常に心臓に悪いものだった。飛行機が現地に到着し迎えの車に乗り込むまで、日和は相変わらず名前の手を握ったままだった。「ニューカレドニアに到着だね!」という彼の言葉を証明するように車の窓から見える海は透き通った美しい色をしていた。別荘のすぐ傍にあるビーチは所謂プライベートビーチというものなんだろうと彼女は感慨深げな面持ちで遠くに視線を移した。彼女が今着ている水着は、彼が選んでくれたライトグリーンで際どいデザインのものだった。こんなもの自分には似合わないんじゃないか。という羞恥心に、もじもじとして日和の前に出て行くことが出来ずにいると後ろから抱き竦められ、心臓が止まるかと思った彼女はびくりと肩を揺らした。
「よく似合ってるね!まぁ、ぼくが選んであげたんだから当然だけどね!自信を持つといいね!」
名前はパーカーを着て隠そうとしていたが、それは日和に没収されてしまった。パーカーが入っているビニールバッグは手の届かない場所に置かれてしまった。水着姿の名前を上から下までじっくりと眺め、彼は瞳を輝かせ褒めてくれる。そして、ガバッと抱きしめられ腕の中に拘束された。素肌と素肌が重なり合い、耐えられないと言わんばかりにすぐに離れようと彼女は身動ぎするが、日和は腕を解いてくれない。胸元がカットされている大胆なデザインになっているせいで布越しに体温が伝わるというよりもぴったりと肌がくっついている。照れているのは自分だけなのでは?と疑う程に日和には羞恥心がないように思える。「ねぇ、日和くん。そろそろ離してよ」と文句を言うと漸くその腕が解かれた。「そうだね!これ以上触れていたら我慢出来なくなりそうだしね!」と今までの色気のある表情から一変し頬を染めて照れている様子の彼の姿はあまりにも珍しかった。
―「名前は本当にぼくを煽るのが得意だね!」
バスローブ姿でベッドの上に腰掛け、カーテンの隙間から見える星空をぼんやりと眺めていたら日和に腕を回され結んでいたバスローブの紐を解かれてしまった。風呂上がりの彼はバスローブを脱いでおり、上半身には何も纏っていない。はだけた胸元を急いで隠すが、彼はそれを許してくれない。「いずれは夫婦になるんだからね!恥ずかしがらなくてもいいね!」と彼は事も無げに言いのけるが、そういう問題じゃない。と彼女は日和をキッと鋭い視線で見据え言及する。「付き合ってもいない女の子とこういうこと平気でするんだね」と。そう。日和からのアプローチはあれど、べつに交際しているわけではない。婚約の話だってどうなるかも分からない。だからこそ、安易にそういう仲になってしまうのは気が引ける。しかし、彼は耳元に唇を寄せて問いかける。「名前はぼくが嫌い?」と。「日和くん、狡いよ。嫌いなわけないし、好きだから拒めるわけないって…分かってるんでしょ?」言葉では拒絶に似たような言動をしていても、心も身体も彼を求めている。それは充分に理解していた。
「ぼくだって同じだね!好きな子を相手に我慢出来るわけないって、名前だって分かってるよね!」
晒された素肌に彼の手が重なる。バスローブを剥ぎ取られ、裸を見られ彼女はあまりの恥ずかしさに身を縮こまらせた。肌に滑らされる彼の手にぴくりと反応し顔を上げた途端、ぽすりとシーツの波の上に押し倒された。「名前。怖がらないで」と唇に優しい口付けをして、柔和に彼が微笑む。彼女を見下ろす眼差しは愛しげにも見えるし熱を孕んでいるようにも思える。「私…日和くんとならいいよ」と全てを受け入れたように上半身を起こして「おいで」というように手を伸ばす彼女は日和に包まれ身を固くした。「そういう可愛いことを言うのは狡いね!もう我慢しないね!」と舌を絡めた熱い口付けに酔わされた彼女の膨らみに彼が触れる。優しく優しく、だが…肝心なところには触れてくれないもどかしさ。それなのに、中々言い出せず。潤んだ瞳で懇願するように視線を絡ませれば、漸くそこが刺激される。指ではなく、舌で交互に両方の先端を愛撫される。再びベッドに背中を沈めた彼女はそのまま執拗な彼の愛撫に翻弄され、太股を擦り合わせていた。秘部が潤っているのが嫌でも分かってしまう。
「ハァ…っ。日和く…っ。もっと…っ」
彼女の懇願を皮切りに、指でくりくりと摘まれたり指先を掠められたりと濃厚な触れ方に彼女はもう限界がきていた。ショーツを自ら脱ぎさり、愛液溢れるそこに手を添えて彼を求める。「ねぇ。日和くんのほしいな」と上目遣いでねだるその姿に彼自身も限界がきていた。避妊具が付けられたそれがゆっくりと蜜壷に沈められる。充分すぎる程潤っていたそこは根元まで彼の男根を咥えた。ふぅ…と息を吐いて、正常位の体位で彼がピストンを加速させると、静かな部屋には淫らな喘ぎ声と粘着質な水音が響いていく。
「アァ…もうっ。おかしく、なっちゃうの…っ」
「いいから。ぼくに、全て委ねて…っ」
このままひとつに溶け合ってしまいそうだった。結合部から発せられるジュブジュブという音に、背徳を感じさせられ感度が高まっていく。彼のうなじに腕を絡ませた彼女はキスをねだり、角度を変えて何度も唇が重ねられた。日和は優しくも激しく腰を打ち付け、胸に触れる。それにつられ彼女の腰もゆるゆると動いていた。誰にも邪魔されない、異国のリゾートで…アイドルの彼と身体を重ねているというのは、いけないことをしている気分にさせられ無意識にどんどん愛液が溢れていく。汗だくになり髪がぺたりと顔に張り付き、日和はいつもとは違った姿になっていた。高貴な彼が雄の瞳をギラつかせ、ジュンの実姉を抱いているなど誰が想像出来るだろうか。
「アァ…っ。しゅごいの…っ。イっちゃいそ…っ」
「可愛すぎる、ね…っ」
離れまいと、互いにきつく抱き合った体勢は奥深くを刺激する。これ以上続けられたら果ててしまうという程に感じる箇所を突いてくる。対する日和も、絶頂が近付いており、彼女にきつく締めつけられ、一枚の膜越しに白濁を吐き出した。達した後も暫く繋がったままで、彼らは言葉を交わす。「すごく幸せだね!名前のこと、もっと好きになったね!」と彼は伝えてくれるが、羞恥心のあまり、名前は視線を背けながら言葉にする。「日和くんも、すごくかっこよかったよ」と。いつものキャラは何処に…?と思わされるくらい営み中の彼は色香が溢れており、巴日和の雄の顔を見た。という気分にさせられていた。それを引き抜き、後処理を済ませた彼はもう一度名前を抱き寄せる。「幸せすぎて離れたくないね!」と遊び疲れた後の子供のような笑みを見せる彼の頬にキスをして、彼女は悪戯っぽく笑った。「私も日和くんのこと、もっと好きになっちゃったよ」と。
END