七種茨短編
漣ジュン
名前
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―Edenのファンから、メンバー宛てにプレゼントが送られてくるのは日常茶飯事だが、その中の一つを興味本位で読んでしまったプロデューサーは現在、Eveのふたりを避けている。彼らと一緒に部屋にいると、どうしても自分が邪魔な存在としか思えないからだ。俗に言う薄い本の、しかも成人向けのものを目にしてから、Eveのふたりはそういう仲なのだろうと思い込んでしまい、いつものように彼らに接することが出来なくなった。
「おひいさんとふたりきりにしないでくださいよねぇ。名前がいれば、少しは我儘がマシになるんすから」
「やーだね。私にだって用事があるし。時間になったら戻ってくるね」
この時のジュンは、何故こんなにも避けられているのか分からなかったが、彼女が部屋を出ていった暫く後に例の物を見つけてしまい、ペラペラと数ページ捲って顔を顰めた。急いで日和の目に触れない場所へと隠して、ほっと一息ついた彼は確信に至った。名前がジュンを…Eve自体を避けているような素振りを見せる理由はあの本にあるのだろうと。用事があるなんて嘘に決まっている。Eveと名前だけでのミーティングが終わった後、家まで送っていくと約束しているのだから。もしかしたら教室にいるのでは?と出向いてみれば予想通り。誰もいなくなった教室では荒んでいる様子の彼女が。
「名前。なんかヤケ酒してるように見えるんすけど…」
「中身は炭酸だけどね」
誰のせいでこんな自暴自棄になっていると思ってるんだと言わんばかりにジュンをジト目で見据える彼女相手にジュンは苦笑した。「あの本を読んで勝手に勘違いしてるだけでしょう?」と不貞腐れたような表情の彼女を手招く。ジュンの考えている事も分からないまま彼に歩み寄った彼女は膝の上へと誘導された。向かい合って座るようにと手を引かれ、恥ずかしさでどうかしてしまいそうな心境を募らせながらジュンの膝に座らされた。
「所詮、私は当て馬だから…」
「真に受けすぎでしょう。こっち向いてくださいよ」
ジュンと日和はただならぬ関係。そう思い込んで口を噤んでいれば、顎を掬われて強引に唇が重ねられた。交際しているわけではないが、密かに想いを寄せている相手のジュンとなら、願ってもないことだった。「俺は、名前にしか興味ないんすからねぇ。こんなこと、名前にしかしませんよ」と耳元で色っぽい声音で告げられ、腕に拘束された。胸がいっぱいになって、何だか悔しくなった彼女は念を押すように問いかける。「おひいさんとBでLな展開になることは絶対ない?」と。呆れたような溜め息をついたジュンは、抱きしめる腕に力を込めた。「そんなに疑うなら、キス以上のこともしちまいましょうかねぇ…?」
「え。え?…本気で言ってる?」
END