七種茨短編
漣ジュン
名前
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-「兄さまばっかりずるい!」
ジュンと共にゲームセンターに行ったというエピソードを兄の日和から訊いた彼女。冒頭の台詞は巴日和が溺愛している彼の妹のものだ。ジュンとは同い歳であり、面倒くさい性格をしている兄に迷惑をかけられている苦労人の彼に、彼女は秘かに好意を抱いていた。巴邸に呼び出されたジュンは「ショッピングモールという場所に行ってみたい」という彼女の我侭に付き合わされる事になるのだった。因みに本日、日和が不在という絶好のチャンスを手に入れた彼女。
「世間勉強の一環として、庶民の娯楽を知ってみたいの」
ジュンと二人きりでデートがしたいという本心を隠している彼女には、早鐘を打つ胸の鼓動を抑える術はなかった。「おひいさんみたいに勝手にうろちょろしないでくださいね」と忠告された彼女はここぞとばかりに彼の腕にしがみついた。「こうして腕を組んでいれば、迷子にならないよ」と自分の腕に腕を絡めてにこにこしている彼女を相手に面食らった様子のジュン。楽しげなその反応に何も反論出来ずにそのままモール内を歩くのだった。
「…で、何処か行きたい店はあるんすか?」
「スター○ックスのフラペチーノとかいうのを飲んでみたいの」
その要望により、例の店に赴いた二人はテーブル席に座り、庶民のカップルと何ら変わらない雰囲気を醸し出している。だが、その話の内容の殆どは日和絡みの愚痴である。穏やかな時が流れていたその刹那、虎視眈々とタイミングを見計らっていた彼女は「ジュンくんのドリンク、一口もーらい!」と彼の飲んでいるフラペチーノに口をつけた。「何してんすか」と困惑の表情を滲ませた彼とは対照的に、彼女は達成感に満たされた顔で笑った。
「ジュンくんジュンくん!このお店で私に似合いそうな品物選んでよ」
「女性のファッションなんてよく分かりませんよ」と彼女に返答をして視線をそちらに向ければ、予想外なことに、彼女が入っていったのはランジェリーショップだった。「ジュンくんの好み、教えてくれなきゃ離さないから」と彼の手を握った彼女に根(こん)負けした彼は好きな色を彼女に明かした後、居た堪れない気持ちに限界がきたのか、足早に店を出ていった。店から出てきた彼女と目が合うや否や、ジュンは悪戯っ子のような笑みをみせた。
「お嬢さまのバストサイズ、ちゃんと覚えましたから」
「うぅ。ジュンくんの意地悪…」
END