七種茨短編
Eden
名前
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―日和殿下、肌綺麗すぎません?至近距離で見ても本当に美人だ。この人に恋愛感情を抱いているわけではないが、美形に抱きしめられ頬ずりされて、ときめかない女子はいないだろう。元はと言えば、私が「寒い寒い」とボヤいていたのが始まりだった。「ぼくが温めてあげるね!それがいい日和」と抱きしめられ、これでも異性なので若干戸惑ったが、日和殿下たまにジュンくんにも抱きついてる時あるので問題ないだろう。と温めてもらうことにしたのだ。私よりも体温が高いようで心地よかった。そんな風に日和殿下と戯れていれば対抗意識を剥き出しにしてきたのはジュンくんで。貼らないカイロを装備している彼に、手を握られて冷えた指先が温まっていく。場所は玲明学園二年S組である。
「なんでおひいさんに抱きしめられてたんすかねぇ。警戒心なさすぎでしょう?」
「だって寒いんだもん。ジュンくんだって日和先輩に抱きつかれてる時あるくせに」
背に腹は変えられぬ。とばかりにEveの面々で暖を取っていたのが今朝の出来事だ。だが放課後、秀越学園のAdam専用ルームに入るなり私は楽園を見つけてしまったのである。部屋には既に凪砂閣下がいて…誘われるがままに彼が被っていた毛布の中へ。逞しい胸に押し付けられて温かいし、いい匂いする。香水の匂いではなさそうだけど、この匂い安心する。凪砂閣下を崇めている自分からすると、今の状況幸せすぎる。楽園を堪能して無言になっていた私を訝しがった彼に名前を呼ばれて毛布から顔を出す。やっぱり閣下のお顔も綺麗すぎて見惚れる。ていうか…顔が近すぎてキスされるのかと期待してしまったじゃないですか。
「凪砂閣下…顔近いです…っ!」
「そうかな?まるで猫を抱いてるみたいで可愛くて、つい」
そんなイチャコラ(?)している時に部屋に現れたのは茨である。私達を見るなり「お邪魔しました。申し訳ございません」と扉を閉めて出ていってしまった。まぁ…この距離感を見れば勘違いするのも仕方ない。しかし、プロデューサーが凪砂閣下とそういう仲だなんてたとえガセネタでも烏滸がましいので、急いで茨を追いかけ事情を説明した。「そういうことだったのですね」と誤解も解けたところで、再び閣下の腕の中に戻ろうとした私の行方を阻んだのは七種茨その人である。「閣下に温めて頂いたなんて、いいご身分ですね」と嫌味ったらしく告げられながら、今度は茨の腕に拘束された。さっきまでぬくぬくだった私の身体は、寒い場所にいたせいで冷えた空気を纏っている茨を拒否している。「指冷た!茨のばか~っ」なんて悪戦苦闘中の私と、私を腕に抱いてご満悦の様子の茨を見て、閣下は愉快げに微笑んでいる。「仲良しだね」と。
「せっかく凪砂閣下にあっためてもらったのに、茨に冷やされたんですけど」
「じゃあ、ふたりともこっちにおいで」と、凪砂のここ空いてますよ。とばかりに閣下の両隣りに収められ、私は口を噤んだ。茨は饒舌というか、自分なんかが…みたいな感じで拒みまくっている。二人揃って閣下に抱かれていると、全く空気を読まずにEveの面々が登場した。「アンタら何やってんすか?」と常識的なジュンくんの台詞と、「ぼくだって参加したいね!仲間外れはよくないね!」と日和殿下も加勢したい発言が。「今はぼくを温めてもらうとするね!」と外から来たせいで冷えきっている日和殿下に抱きしめられて、今までの温もりを全部持っていかれてしまった気がする。普通、この流れだったら、センターに座っている凪砂閣下を取り合う図になるんじゃないですか?日和殿下の目的、私かよ!いつの間にか真ん中に座らされて、右には閣下、左には殿下…という、両手に花状態になってしまった。因みに二年勢は遠巻きに眺めてくる感じで。
「なんすかこれ。ホストクラブごっこでもしてんすか?」
「ホストクラブEdenか。悪くないな…」
「なんですかね。この茶番劇」
END