七種茨短編
Eden
名前
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―私は寝正月がしたかったんだ。ウィンターライブまで忙しかったし、骨休めをする暇さえなかったから。「食べてすぐ寝ると豚になる」とはいえ、炬燵の中の快適さには抗えない。友人から届いた年賀状を見てそれらを机の上に置いたまま、蜜柑を食べ終えてごろ寝していた刹那…チャイムの音と玄関先で母が誰かと喋っている声が聞こえてきた。すっぴんに加えてジャージみたいな格好をしている為、何も聞こえなかったふりをして炬燵に潜ったまま狸寝入りでやり過ごすことに決め込んだ。足音が近付いてくる上に、聞き覚えしかない声が聞こえて心臓が跳ねる。
「寝ちゃってるの?炬燵で寝たら風邪引くよ」
「男から年賀状きてますね」
「ちょっと!なに勝手に年賀状見てんの」
炬燵に四人分の脚が入ってきたせいで必然的に炬燵を出ざるを得なくなった私が仕方なく顔を出すと、我が家のリビングにてEdenが勢揃いしていた。美形しかいない彼らを母が快く迎え入れたんだろう。案の定、温かい甘酒を運んできてくれたし。それはともかく、毒蛇の褒め言葉を真に受けないでほしいものだ。「お美しい」とか言われて調子に乗るのもやめていただきたいし、「うちの娘は嫁の貰い手がないのよね」みたいな相談をしてEdenの誰かに娘を貰ってくれ的な会話を聞かされる私の気持ちも考えてほしい。しかもその気になっている人がいるし。「そういう事ならば、自分が」と茨が立候補してくれた瞬間、すかさず日和先輩が「認めないね!」とずいっと接近してくるし、ジュンくんは宥め役をやってくれるし迷惑をかけて申し訳ない。母は「買い物に行ってくる」と出かけていったが、話の渦中の私はというと、我関せずな感じで甘酒を飲んでいる。Edenが何だか無駄な争いを繰り広げているので、すっぱりと否定させてもらおう。
「私、Edenの誰かと結婚する気ない」
「そうなの?私は是非お嫁にきてほしいんだけど、だめ?」
凪砂先輩ずるい!そんな可愛い顔して問われたら「だめじゃないです」って言いたくなるわ。ところで、正月早々押しかけてきた彼らの思惑を訊くのを忘れていた。年末年始はテレビに引っ張りだこだった故に、こんなとこに来てないで身体を休めてほしいものだが…。「プロデューサーの手料理が食べたくなったからね!」と日和先輩が。「直接新年の挨拶に伺いたかったので」と茨が。「おひいさんの付き添いっすよ」とジュンくん。…まぁ、予想通りだけど。「ただ会いたくなったから」と答えてくれる凪砂先輩は私の癒しだ。彼の腕にすりすりと甘えていると、頭を撫でてくれるし閣下最高すぎる!お腹の辺りに伸びてきた手は茨のもので、彼のデリカシーのない一言で見事にメンタルを抉られた私は閣下に泣きついた。
「さては正月太りしましたね?」
「えーん。毒蛇がいじめる~」
「茨。意地悪しないの」
END