七種茨短編
Eden
名前
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―「風邪が移るといけないから」
彼女の部屋に入り浸るEdenの面々はその忠告にやれやれと首を振った。場所は秀越学園近くのアパートの一室である。プロデューサーが熱を出して寝込んでいると訊き、駆けつけた彼ら。台所ではジュンがお粥を作っている最中だった。「寒い」と呟けば、凪砂と日和に両側から抱き締められ、シングルベッドの上はとても窮屈だ。彼らにマスクを装着させてはいるが、こうも距離が近いと移してしまうんじゃないか。と、彼女は悩ましげに眉根を寄せた。「距離が近すぎるんですけど…」と困惑している彼女とは裏腹に、彼らは全く気にしていない様子で腕を絡めている。
「ぼくらに看病してもらえるなんて、幸せ者だね!」
体調の優れない時にEdenの相手をすることがどんなに大変なことなのか。彼女は現在、身をもって実感していた。基本的に自由奔放で話が通じない日和と、何を考えているのかよく分からない凪砂を諌めるのも面倒になり、彼女は無心で目を閉じた。そのまま意識を手放し、目覚めた時には市販の風邪薬を買ってきてくれた茨が傍にいた。薬を飲む前に何か食べたほうがいいと判断し、ジュンが作ったお粥を冷ましながら食べさせてくれるのは日和だった。「俺が作ったんだから、その役割はおひいさんがすべきじゃありませんよねぇ…」と後ろから文句を垂れているジュン。「ぼくはお兄ちゃんだからね!あーんして食べさせてあげるのは当然だね!」と何故か兄気取りしてくる日和を拒むことなく食べさせてもらうことにしたのは、まだ熱があるが故の思考力の低下からか。「ジュンくん、美味しいよ。ありがとう」と笑みを向けられ、お礼を告げられたことでジュンはある程度満足したが茨の発言を聞いて顔を顰めた。
「良薬口に苦しと言いますし、自分が飲ませて差し上げましょう」
「口移ししたら流石に移っちゃうでしょ」
「問題なのはそこじゃないっすよ。よく見てください。錠剤だから苦いわけがないし。茨の下心が見え見えなんすよ」
「ほら。水汲んできましたから、薬飲んで寝てくださいよ」
言われた通りに薬を飲んだ彼女の額に、新しい熱冷まシートを貼ってくれたのはジュンだった。再び横たわった彼女は、枕も氷枕に替えられていることに気付いて弱々しく微笑んだ。そしてこの後、誰が着替えさせるか問題が発生することになるのだが、深い眠りに落ちていく彼女は知る由もない。
―「ぼくはお兄ちゃんだから、着替えさせてあげるのもぼくの役目だね!」
「替えの服を用意しましたので、ここは自分が担当すべきかと!」
「私に任せて」
「却下却下!って…人の話聞いてます?」
END