七種茨短編
七種茨
名前
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-確か寝る前に、スマホでEdenの画像を検索してた筈。明日も仕事だとか考えて、少しでも二次元に癒しを貰おうとして…。そんな私は翌朝、クローゼットを開いて愕然とした。ハンガーに吊されている制服には見覚えがある。グレーのジャケットに緑のチェック柄のスカート。「トリップするなら夢ノ咲のプロデューサーになりたい」と以前からそう語っていた私の理想は呆気なく打ち砕かれた。
「あっはっは!おはようございます」
地図を頼りに、秀越学園2年S組に到着。そしたら毒蛇キター!同じクラスには七種茨がいる。さて、何の因果か…私はあんスタの世界にトリップしてしまったわけで。ゲーム内で読んだから、茨の過去を知っている身としてはなんか優しくしたくなる。私、元々成人済み社会人だし歳上だからね。「茨ちゃん」て呼んだら怒るかな。とか軽率に口にしなければよかった。「なんですか。その呼び方」と不機嫌になってしまわれた。間近で見ると肌綺麗だし美形だし、性格があれでも見惚れる。さすがアイドル。「茨って綺麗な顔してるから、女装したら私よりも可愛くなりそうだなぁ。って思ったの」うん、正直に暴露した。そしたら「そんなの嬉しくありませんよ」だって。照れた顔しながら何言ってんだか。可愛いやつめ。
「何を仰る。自分が女装しようとも、名前の美貌には及びませんよ」
彼の特技、褒め殺し。心が篭ってないと分かっていながらも、大袈裟に褒められるのは何だかむず痒い気持ちにしかならない。はぁ…早くジュンくんに会いたい。Eden唯一の常識人、ジュンくんは私の心のオアシスである。しかし、現在昼休み中なので彼に会うことは叶わず。食堂…もとい料亭で私の向かいの席には凪砂くんが。隣には茨が座っている。美形二人に囲まれて食べる昼食は最高なシチュエーション。その筈だが、ご飯が喉を通らない。食欲が減退している。小鉢に入った切り干し大根を隣の茨のお盆に勝手に乗せた。「好き嫌いしないでください」と気付かれたと同時に咎めの言葉が。
「お腹いっぱいなんだもん。茨が食べてよ」
「そう言いつつデザートは食べるんですね」
図星だ。私はデザートのプリンを手に、ある事を思い出した。そういえば、茨はプリンが好物という描写を見た覚えがある。試しに「あーん」したところ、困惑した様子で拒まれた。だが、これで諦める私ではない。彼が口を開いたタイミングでプリンを押し込んだ。「何するんですか」と憤慨されたかと思いきや、もぐもぐとプリンを味わっている。七種茨はプリン好き。これは確定事項だ。私もプリンを食べようとスプーンで掬って食べようとした瞬間、がっちりと手を掴まれた。なんだ茨め、もっとプリンくれってか?いや、違うや。ジト目だ。信じられないものを見るような視線で見つめられている。
「そのスプーン、使うんですか?」
「使うけど?」
自分がプロデュースしているアイドルが使ったスプーン使えないほうが失礼なのでは?と思うのだが、茨は間接キスを嫌うタイプなのだろうか。神経質なやつめ。このスプーン使ってやる!そう、嫌がらせの如く。彼の使用済みスプーンでプリンを咀嚼した。呆れたような溜め息が聞こえてくる。「自分が気を揉んでいるのが馬鹿らしくなりました」って、間接キス気にしてるとか純情かよ。思わず、「茨って可愛いね」とか口が滑ったじゃないか。こりゃまた不機嫌になるのでは?いや…違った。褒め殺しだった。
「可愛いのは名前のほうでしょう?プリンを食べている姿が小動物のような愛らしさですし」
凪砂くん、賛同しないでいいよ。イケメン二人から褒められるなんて、畏れ多くて、今すぐここから消えてしまいたい。だが、トリップの定番とでも言おうか。私が元の世界に戻れる日は来ないのである。
END
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