七種茨短編
漣ジュン
名前
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-「あの女はなんなんだ」とEdenの面々は口々に呟いた。Edenのプロデューサーの名前は答える。「なんでも…親がプロデューサーで、コネで入ってきた娘らしいけど」と。「ずっとジュンにべったりですよねぇ」と茨が言うように、香夜という新入りのお目当ての人物はジュンのようだ。これには日和もうんざりしているようで、「ジュンくんと話してるとあの女が割入ってくるんだよね」と珍しく顔を顰めていた。
「こういう事は同性の名前のほうから言及すべきなのでは?」
「えぇ!?嫌だよ。あの娘、私の事ライバル視してるみたいで凄い形相で睨んでくるし」
そもそも、ジュンは名前の恋人であり、自分の彼氏にベタベタとされて彼女は秘かに苛立ちを募らせていた。「ジュンくんもさ、拒否ればいいのに…」とぽつりと不満を漏らすと凪砂が窘めるように彼女の頭にぽんと手を置いた。「ジュンは根が優しいから」と言われ、今だけは我慢しようと顔を上げた彼女の耳に響くのは助けを求めるようなジュンの声だった。「名前、話があるんで来てくださいよ」と彼女の腕をジュンが引いて部屋を出ていくが、その様を目にした香夜は面白くなさそうに唇を歪めていた。
◆
ー「ほんと、なんなんすかねぇ?あの女!」
空き部屋に入るや否や、開口一番に憤りを顕にしたジュン。「名前と話そうとすると邪魔されるし…ずっと名前に触れたかったんすよ」と愛おしげに彼女を抱き竦めて彼は目を細めた。その温もりに安心感を抱くと同時に、彼女の優しい香りが鼻腔を掠める。電気を付けていない薄暗い部屋に、窓から射し込む日差しが穏やかに部屋を照らしている。「こうしてると安心する」と抱き合ったままの姿勢で彼が告げると、彼女もそれに応えるかのように「ジュンくん好きだよ」と唇に触れるだけの口付けをした。二人は甘い雰囲気に満たされていくが、ジュンの愚痴はまだ続いた。「こんな得体の知れないもの、飲めるわけないっすよ」とペットボトルに入ったそれはモスグリーン色であり、「何これ、青汁?」と彼女が問いかけるもジュンは首を傾げた。
「あの女が作ったとかいう栄養ドリンクらしいっすよ」
「うへぇ…。日和先輩なんか「悪い日和!」とか言いそうだね」
「それが実際、言ってたんすよねぇ。お陰でおひいさんの機嫌は悪くなるし、とんだとばっちりっすよ」
「厄介者は俺に任せて、全員名前のところに避難してるし、ストレス最大なんすけど」とジュンは深い溜め息をついた。そんな彼の髪に指を滑らせながら、頬を寄せた彼女は甘く囁く。「頑張ってくれてありがとう、ジュンくん。私にいっぱい甘えていいんだよ」と。その一言を耳にして、理性が抑制出来なくなったとばかりに噛み付くようなキスをする彼の瞳は情欲に染まっていた。艶かしいリップ音が静かな部屋に響く。息も絶え絶えに、ジュンの胸板を押し返す彼女の腕には力が入らず、その体はぽすりと彼の腕で受け止められた。
ー「俺らが居ない間に何かあったんすか?」
部屋に戻ってきたジュンが尋ねると、清々しい表情を携えて日和が答えた。「毒蛇があの女に、「褒める所が一つもない」やら「名前のほうが100倍可愛い」とか言ったんだよね!清々したね!」と。「それで、あの娘はショックを受けて泣きながら部屋を飛び出して行ったんだ」と補足するように凪砂が付け足した。その場面、すごく見たかった。と、ジュンと名前の心には通ずるものがあった。
「Edenには名前がいるんだから、他のプロデューサーなんて必要ないね!」
「みんな名前のことが大好きなんだよ」
「まぁ…。と、いうわけであの女は近いうちに排除されるでしょう」
「そう。よかったね、ジュンくん」
「えぇ。まぁ…別の意味で安心出来ないんすけどねぇ」
END