七種茨短編
漣ジュン
名前
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-「会いたいようで、会いたくないような…」
どうせジュンくんには恋人がいるに決まってるし、私のことなんて恋愛対象ではないのだろうし…。なんて、いじけて大きな溜め息が漏れる。私の初恋の相手である漣ジュンくんは、どんどん遠い存在になっていく。辛いなら音楽番組なんか見なければいいのに。
「うわ。でかい溜め息」
「…んん!?なんで!?」
あのジュンくんが目の前にいる。幼馴染みとはいえ中学卒業後から何年も会っていなかったのに、何故うちに?なんて…グルグルと思考を巡らせる私とは裏腹にジュンくんはなんか不機嫌だった。「ひとのこと見ながら溜め息って…」と、私が音楽番組に出演してたEveを観てたからなんか勘違いされているっぽい。「いや〜、日和くんてかっこいいなっていう感嘆の溜め息だから」なんて、咄嗟に誤魔化したけれど、それがいけなかったらしい。
「はぁ…っ!?おひいさんのファンなんすか!?」
ジュンくんご乱心じゃないですか。そんなに私が日和くんのファンだったら嫌なのかよ。まぁ、私はアイドルにさほど興味はないし日和くんのファンでもないんだけどね。咄嗟の悪戯心なんだけど、ジュンくんがこんなに落胆して真っ白に燃え尽きてしまうとは思ってもみなかった。
「私が日和くんのファンなわけないじゃん。本当はジュンくんが遠い存在すぎて嫌になって、それで溜め息…」
ジュンくんほんと何考えてんのか分からない。唐突に抱きしめられて離してくれなくなった。少しはこっちの気持ちも考えようね?と抱きしめ返せずに無言でいたら抱きしめる力が強くなった。胸が苦しいというか、物理的に苦しいよ。ジュンくんてこんなキャラでしたっけ?中学の時はもっとクールな感じだったと思うけど。
「ジュンくん…なんで付き合ってもいない私なんか抱きしめてんの」
「はぁ…。名前ってなんつーか鈍感っすね」
今度はジュンくんがクソデカ溜め息。ディスられてショックなんだけど。私って鈍感なんだろうか…。抵抗するのも勿体ないし無言でいたら全然手を離してくれない。すごく意外だよジュンくんてこんなに軟派でしたっけ?と、「誰にでもこんなことしてんの?」なんて棘のある言い方をしてみる。
「可愛くねぇ言い草…」
「初恋の相手にこんなことされるこっちの身にもなってみてよ。ジュンくん余裕たっぷりでムカつく…っ」
「俺にこんなことされると思ってなかったんでしょう?」
ジュンくんはずるい。こんなあっさり唇を奪うんだから。間近で見るとほんとかっこいいな。さすがアイドル…。こんなに余裕たっぷりなジュンくんが私から唇重ねられたら無言になるなんて誰が予想できただろうか。目も合わせてくれないし。
「久しぶりに会ったらすげぇ可愛くなってるし。俺の初恋がアンタだなんて思ってもいないんでしょう?」
「可愛いって褒められるのも初恋なのも嬉しいけど、ジュンくん手早いよね。付き合ってもないのに」
「抵抗されたらやめるつもりだったんすけど、名前も満更でもなかったでしょう?それに、こんなの見つけたんで」
家族にも秘密で購入していた漣ジュン写真集が彼の手に。恥ずかしすぎる…。ジュンくんの肉体美を眺めてニヤニヤしていたなんて絶対言えない。しかし、私の弱味を握ったジュンくんはすごくいい笑顔。「こんなの買ってるってことは俺のこと好きなんすね」と。
「え。この可愛いわんちゃんに“血まみれメアリ”なんて名前付けてるの!?」
写真集の1ショットでジュンくんとイチャイチャしていた犬ちゃんはブラッディ・メアリちゃんというらしい。どういうネーミングセンスしてんの?
END