七種茨短編
七種茨
名前
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※短めなので続編あり。
―「副所長…距離近くないですか?」
「恋人ならば普通の距離感だと存じますが」
え…私と茨くんて付き合ってんの!?と叫びたい気持ちを押し込め、極めてポーカーフェイスで目の前の彼を見つめる。さて…この世界にトリップした私はEdenの七種茨くんと付き合っているらしい。副所長室に二人きりの空間で、彼にずいっと距離を詰められて思わず視線を逸らしたら不満そうな反応をされた。茨くんのことは嫌いじゃないけれど、忙しそうだし恋人らしいこと嫌がりそうな彼とお付き合いしているというのはちょっと気が引けるというかなんというか。
「私、仕事の要件でここに来たんですが…」
「名前さんは真面目でありますね。少しでも恋人らしいことをしようと思った自分が恥ずかしくなりますね」
茨くんは「あっはっは」と罰が悪そうに笑っているけれど、これは付き合ってるのに構ってあげられないことを気にしてる茨くんなりの優しさなんだろうな。察しの悪い女でごめんよ。と、気まずそうに眉根を寄せている彼に謝りたくなった。ゲーム内の茨くんを思い出すと現在私の前で哀愁を漂わせている彼は別人のように思えてしまうな。茨くんは思ったよりも可愛げあって、絆された私はその気持ちに応えてやろうとひそかに決意。手始めに、仕事に戻ろうとした彼のネクタイを引っ張って唇を奪う。茨くん程の美形に自分からキスするのは緊張するな。
「自分を弄んで…随分愉しげでありますね」
「いやぁ…茨くんが可愛くてチューしたくなっただけだよ。弄ぶなんてとんでもない」
仕掛ける方が得意そうだからやられる側になるのは恥ずかしいんだろうな。今まで、Edenなら漣ジュンくん派だったけど、茨くんの可愛さに目覚めたよ。抱きついて上目遣いに見つめてみると照れ顔の彼と目が合った。こんな表情初めて見たな。そうか…私は茨くんのメディア向けの顔しか知らなかったんだな。恋人の前では表情緩ませるなんて可愛いな。などと見惚れていたらやられましたわ。壁に押さえつけられて性的な口付けをされた。
「茨くん。恋人らしいこと…しよっか?」
「その包容力…あなた様は女神ですか!自分、涙で…、」
慇懃無礼な喋り方…なんというか胡散臭い。よく舌が回るところは茨くんらしいけど、こういう褒め言葉はあんまり嬉しくないな。年上らしく「よしよし」と頭を撫で撫で。彼氏の茨くんを愛でたい衝動に駆られたのだ。胸に甘えたくなるのは男の子なら仕方ないよな。と、思う存分甘やかしていたらそんな彼から一言。「このニットだと名前さんの豊満な胸が目立ってしまいますね!」と。
「なるほど茨くんは彼女のおっぱいがそんなに気になるのか」
「お恥ずかしい!我が身の不明を…、」
「なーんも恥ずかしくないよ。だからそういう台詞は聞きたくないな」
ほんとによく喋るな茨くん。確かにニット服だと胸の大きさがよく分かるから女の私としても納得。だんだん茨くんに愛着が湧いてきたな。毒蛇は思ってたよりも可愛いし愛おしい。仕事中だからいかがわしいことは慎むべきだけど、茨くんの膝の上に座ってから全てを理解した私はどうするのが正しいんだろう?うん…お尻に当たってるからね。放置するのも可哀想だしね。
「…お口でしてもいいかなぁ?」
「…〜っ。自分が許可する前に始めようとしないでください!」
「いやぁ…脱いでないのに、ここまでおっきくしてるとは思わなくて」
茨くんは誘惑に負けない強い子だった。夜まで持ち越しになっただけだけど、私のほうがもの足りなさを感じているんじゃないかと思う。副所長室を出てすぐに、推しのジュンくんとすれ違った。トリップ前の私なら「ジュンくんだぁ〜」と大歓喜してそうなものだけど、気まずい気持ちになっただけだった。そう…私は茨くんに惚れてしまったのだろう。
END