七種茨短編
漣ジュン
名前
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-「ジュンくんの学ラン姿すごくいい」
「いつも見慣れてる格好っすよねぇ?」
私の目の前にいるジュンくんは、まだEdenの漣ジュンではなく、アイドルでもない。どういうわけか、あんスタの世界にトリップしたら推しはまだ中学生だった。元は成人済みOLだった私も、同じく中学生に。手持ちの教科書で確認したら三年生だと発覚。15歳のジュンくんは、まだあどけなくて可愛い。彼はクラスメイトで、席も前後なのでとても近い。玲明学園の制服は見慣れていたけれど、学ランも似合うと思う。だが、それとは裏腹に私は中身成人済み女なので、セーラー服がコスプレ感覚で恥ずかしい。冒頭の何気ない独り言を聞いていたジュンくんに訝しげな視線を向けられた。そして、そんな彼がぽつりと呟いた言葉に思わずプロデューサー目線で答えてしまった。
「喋ったこともない相手にラブレター送るってどうかと思いません?」
「ジュンくんを見た目だけで判断してほしくないな」
「真面目だし面倒見いいし、努力家だし…」と、推しのいいところなら何個でも上げられるんだけど、褒めまくったら「もう黙れ」みたいな目で見られたから渋々黙ったけど。「こういうの断るのも面倒なんすよねぇ」と、モテるが故の贅沢な悩みを私は「うんうん」みたいな感じで頷いて聞いてあげた。何気なくジュンくんの彼女の有無について問うてみたところ、「そんなのいるわけねぇっすよ」と、なんかキレられた。フリーだから色んな女子に告白されるんだろうな。彼女がいたとしたら告ってくる子も少ないだろうに。と…思ったけど言わない。推しの恋愛事情は知りたかったような知りたくなかったような…という複雑な気持ちになるので。
「そういう名前はどうなんすかぁ?」
「ジュンくんが近くにいるのに、他の男に惚れるわけがない」
際どい発言をしたらそれからジュンくんは全然喋ってくれなくなったのだけど、そのジュンくんと只今、私の自宅に二人きりという状況である。なんでも…うちの母が夜勤の日はジュンくんが夕飯を作りに来てくれているらしい。漣家はうちのすぐ隣だ。幼馴染み設定最高。なんて喜んでる場合じゃない。ジュンくんがエプロン姿でうちのキッチンに立っている。手伝おうとしたら断固拒否されてショックだった。
「名前一人で料理して鍋焦がしたんでしょう?」
「そういうこともあるよね…」
この世界の私料理音痴すぎる。そんな奴をキッチンに入れるのは不安しかない。ってことなんだろうな。今の私は中身成人済み社会人なので、それなりに料理は出来るのだけど。ジュンくんの手料理食べたいから料理ヘタなふりしとこ。器用に料理をこなすジュンくんかっこいい。近くでジロジロ見ていたら、「座って待っててくださいねぇ」とか「あ〜…やりづら」みたいな感じで追い出された。あのおひいさんの相手をしているだけあって、ウザ絡みを受け流すのが上手いな。ポタージュスープを用意して待っていたら、めちゃくちゃお洒落なパスタが運ばれてきた。
「ジュンくんお料理上手だね。女子力たか…」
エビとトマトの冷製パスタ美味。エビが私の好物だって知ってるのかな?とか自惚れかもしれないけど嬉しくてにやけていたら、ジュンくんに気味悪がられた。だって推しの手料理が食べられて幸せなんだもん。ニヤニヤしててキモいとか思わないでほしい。トリップしてから、まじまじと眺めてるジュンくんのご尊顔が眩しくて胸が苦しい。長い指とか、腕が逞しいなぁ…とかジュンくんのことを意識してしまうから、夕飯を食べ終わった私は「お風呂を洗ってくる」と告げてバスルームに逃亡したのだけど…。誤ってシャワーを噴射してしまってずぶ濡れになった私の前に現れたのは何か企むような笑みを浮かべたジュンくんで。
「ずぶ濡れっすねぇ…」
やがて伸ばされた彼の指先はペタリと肌に張り付く白いシャツのボタンを外していく。ジュンくん何を考えてるの?とか、そういう関係になってしまうかも…とかいかがわしいことを考えていた私はジュンくんに怒られて我に返った。「こんな簡単に身を委ねるもんじゃねぇっすよ」と。なんだよジュンくんのほうから手出してきたんじゃん。と睨むみたいに見つめてみたけれど、何故かジュンくんの方が顔真っ赤だったんですよね。
「ジュンくんはヘタレだな。まだ下着も見えてないのに」
そういう流れだな。と中身成人済み女なりに覚悟を決めていたのだけど、胸元のボタンを外そうとした手が止められ、優しく抱きしめられた。「私水浸しだからジュンくんまで濡れちゃうよ」とかいう言葉も言えないまま、唐突に唇を奪われた。私を壁に押さえつけ、乱暴に貪るようなキスを中学生のジュンくんからされるとは思わなかった。やがて我に返った彼は「こんな最低なことしてすんません」とバツが悪そうな表情で謝ってくれた。ジュンくんには悪いが、不器用なキスに私はとても興奮した。ジュンくんキスヘタだった。
END