七種茨短編
乱凪砂
名前
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- 「凪砂くんて距離感おかしい時ないですか?」
相談相手になってくれた日和くんには「そう?よくわからないね!」なんてあっけらかんと笑われた。ユニット仲間にはあの距離感で接していないらしい。ということは、私に対してだけあの距離感なのか。と腑に落ちない気持ちで溜め息をつくと目の前の彼に「溜め息なんて悪い日和!」とか言われてしまった。カフェシナモンにて、凪砂くん関連のことを日和くんに相談している私はコズプロ所属のただの事務員である。少し離れたところにいるジュンくんからの視線を感じるが、その横をすり抜けて現れた人物がいる。
「名前さん。日和くんと何を話しているの?」
うん、やっぱり距離近いな。私の背後に立った凪砂くんに首元に腕を絡まされて後ろから抱きしめられているみたいな体勢になってるし。「大したことない、ただ世間話をしていただけだね」と日和くんが言ってくれるも、凪砂くんの口からとんでもない一言が飛び出した。「名前さんは私のだからあげないよ」と。無駄に空気を読んだジュンくんが日和くんを迎えに来たので、向かいの席には凪砂くんが。じ〜っと見つめてくるからなんとなくコーヒーに口をつけて私は遠くを見つめた。美形に凝視されるのは心臓に悪い。
「苺のタルト美味しいよ。凪砂くんも食べる?」
話題を逸らしたくて問いかけた言葉も、凪砂くんが私にアーンして食べさせてほしいと返してくるものだから思わず固まった。凪砂閣下はこんなに甘えん坊だっただろうか。とか、いつもの支配者キャラはどこへ。とか考えてしまって手が震えた。素の凪砂くんは幼子のような感じなんだな。見た目とのギャップもいいと思うけれど、なんせ歳下の男の子しかもアイドルからアプローチ(?)されてどう反応していいのかわからない。今ので間接キスになってしまったし。
「名前さんは閣下とはどういう関係なのでありますか?」
凪砂くんのSEC●Mこと茨くんが迎えにきてくれて私は冷や汗をかいた。「顔見知り程度の間柄ですよ」と適当に受け流していたのに凪砂くんに悲しそうな表情で「私は名前さんと仲良くなれたんだとばかり思っていたのだけど、気のせいだったのかもね」と彼の発言を聞いて心苦しくなった。謎の罪悪感に苛まれる。
「事務員相手とはいえ、Edenのメンバーが女性と親しげにしているのはよくないってことだと思うよ」
「でも私は名前さんと仲良くしたいし、あなたは私にとって特別な存在だから」
こんなやり取りがあった数日後、私は危機的状況に陥っていた。なんと、凪砂くんと二人きり、エレベーター内に閉じ込められたのである。異変に気付いてすぐに電話マークの緊急ボタンを押そうとしたのだが、凪砂くんによって阻まれた。瞬く間に彼の腕の中に閉じ込められてしまって、無言で彼を見上げる。
「折角名前さんと二人きりになれたんだから、もう少しこのままがいいな」
「付き合ってるわけでもない男女が、この距離はよくないと思う」
「そう?それなら、お付き合いしよう」
「私はね、名前さんのこと大事にしたいと思ってるんだ」と淡々とした口説き文句と同時にぎゅうっと抱きしめられて思考が停止した。凪砂くん趣味悪いな。と、ふと冷静になって彼から離してもらおうと口を開いたのだけど、むしろ効果はなく。動き出したエレベーターが開いて茨くんが駆けつけたせいで凪砂くんに抱きしめられている場面を見られてしまって、さぁ大変。
「名前さん。閣下を誑かして、どういうおつもりでありますか!?」
「私と名前さんはお付き合いしてるんだから、問題ないでしょ?」
「…もう、そういうことでいいです(やけくそ)」
END