七種茨短編
漣ジュン
名前
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―「ジュンくんはさぁ…日和さんみたいなタイプの、ワガママ系女子が好きなんでしょ?」
自分だってジュンのことを振り回してみたい。ワガママをきいてほしい。とは思うものの…実際そんなことできないしジュンに厄介がられるのも嫌だ。と、考え込んで口を噤んでしまった彼女の名は名前。ジュンとは幼い頃から交流があり幼馴染みのような関係性である。実家暮らしで地元で働いている彼女の元に、ただ今里帰り中のジュンが会いに来てくれたのだ。冒頭の台詞は彼女が何気なく投げかけた一言で。
「偏見すごいっすね」
「実際、そういう娘と付き合ってたり…」
自分から持ち出した話題なのに、口にすると胸が苦しくなって途中で言葉が途切れた。彼は今をときめくEdenのメンバーでアイドルで…決して手の届かない相手である。そう実感した途端虚しくなった。手元に視線を落とし、麦茶の入ったコップの水面を見つめる。一方のジュンは、そんな名前の様子を一瞥して呆れたような溜め息をついていた。伸ばされた掌が彼女の頭に乗せられ、そのままあやす様にぽんぽんと触れられた。
「ワガママな女子と付き合う趣味はねぇっすよ。あー…でも名前って昔ワガママでしたよねぇ」
「足が疲れたからおんぶしてくれとか、四つ葉のクローバー探すの手伝えとか」と、幼い頃の黒歴史を掘り返されて恥ずかしくなった彼女は唇を歪めて苦々しい表情をしていた。「そんな昔のこと忘れてよ」と呟くとジュンに苦言を呈され、軽口の言い合いになっていた。名前は唇を尖らせて不貞腐れていたが、ジュンはそれに気付くと笑っていた。そして、ここであることに気がついた。名前がジュンから物理的に距離を取っている。リビングには絨毯の上にテーブルがあり、脇にはソファーがある。絨毯の上に座っているジュンから数メートルも距離を置いて彼女はソファーの端に座っている。
「名前。異様に俺から距離取ってません?」
「人気アイドルの隣りに普通に座れるほど心臓強くないもん」
あの頃のような関係に戻れたのかと思っていたのに、名前は自分から距離をとるばかりで。ジュンは寂しさを感じていた。化粧もしており、服装も落ち着き、可愛かった少女から大人の女性らしくなっている彼女を一目見た時からジュンは心が落ち着かずにいるのだが、名前は絶対に気付いていない。それを証拠にジュンとちっとも目を合わせてくれないのだ。名前がそうくるなら…とジュンは加虐的な笑みを滲ませながらソファーに座る彼女に近付いていく。
「ジュンく…っ。距離、近い…!離れてよ…っ」
隣りに座ったと思いきや、そのまま名前に顔を寄せてソファーに手をついたジュンは彼女を腕の中に閉じ込めた。抵抗する腕は捕まえられて、ジュンは彼女の目の前でにやりと口角を上げた。真っ赤な顔で睨んでくる姿が可愛い。離してやるもんか、とジュンは名前を押し倒す体勢になった。彼女の目に映るのは部屋の天井と、なんだか嬉しそうなジュンの姿だけだった。
「ジュンくん…っ。なに考えてんの…っ!?」
「何って…こういうことっすよ」
ジュンの指先が大きく開いた胸元を撫でた。言葉とは裏腹に、ジュンに触れてほしくて堪らない。涙目の彼女と目が合うとジュンが名前の唇を奪った。ほんの一瞬触れるだけの、唐突な口付けだった。「鈍感な名前には、こうでもしないと俺のこと本気にならないでしょう?」とペロリと唇を舐める彼の仕草がやけに色っぽく瞳に映った。
「初恋の相手に再会したら、惚れ直したんすよ。こんなに綺麗になってるし、なんか格好がやらしいし…」
「ケダモノだぁ。でもジュンくんのこと大好きだから、拒めなくて悔しい」
「こういう…胸大きいの分かるような服着るの禁止っすよ」
「ちょっと待…っ。ひ、ゃァ…っ」
「すげぇやらしいっすねぇ。可愛いっすよ」
「ふ、ァ…っ。それ…っ、やァ、ンン…っ」
薄着でいたのが災いした。パープルのベビードールの肩紐が落とされて柔らかな膨らみがあらわになる。上乳に吸いつかれ、両胸をやわやわと揉まれる。敏感なそこを執拗に舐め回されて静かな部屋に嬌声が響き渡る。こんなのよくない。と頭では分かっているのに身体は彼を欲していて、身を委ねてしまう。やがて、伸ばされた彼の指が蜜壷に沈められた。
END