七種茨短編
七種茨
名前
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―「突撃!侵略!制覇〜っ」
Adam三ヶ条を口にしながら副所長室に入ってきた人物…スラリとした長身で華やかな容貌の女性だ。その姿を目にし、茨はビクリと肩を震わせて苦々しい表情を滲ませた。げんなりしている彼とは対照的にイキイキと目を輝かせている彼女の名は七種名前。血の繋がりはないとはいえ、茨の姉である。「Adam三ヶ条とか言ってたけど、これ茨ちゃんしか言ってないよね」「久しぶりに会えたのに、何その仏頂面は」と、口撃(?)された茨は遠くに視線を逸らした。よく喋るところは姉弟で共通しているだろうか。
「ここは関係者以外立ち入り禁止なのですが」
「コズプロ副所長の姉である私が関係者じゃないと…?」
「メールのやり取りで済むでしょう。わざわざ来なくたって…」
名前は音楽関係で仕事をしており、作った曲をコズプロ所属のアイドルに提供したことから、弟との関わりができたわけだ。メールや電話でのやり取りで事足りるというのは事実。しかし長い間、弟と顔を合わせておらず今回けしかけたのだ。出逢った当時は可愛かった茨が随分大きくなったものだ。と、ハグをしながら彼を見上げるが、身長はそんなに伸びていない気がする。顔も可愛い。
「何笑ってんですか」
「いや〜。茨ちゃんは可愛いなぁって…」
可愛いやら身長そんなに伸びてないやら、貶されているのか褒められているのか。用が済んだなら早く帰ってくれ。と、それとなく促したのだが、彼女の口からとんでもない提案が飛び出した。姉とはいえ、上目遣いで見つめてくる顔が可愛くて見つめ合うことができず、茨は視線を泳がせスキンシップを拒んだ。「ねぇねぇ。今晩、茨ちゃん家に泊めてよ」と、この提案は、一人暮らしの弟が心配だとかそういうのではない。ただ単に離れるのが名残惜しくなっただけだ。
―「姉さん。恋人いないんですか?」
「つい最近別れた」
「だから茨ちゃん癒してよ」と、この言葉に深い意味はないのだろう。やましい捉え方をしてしまうのは、男の性(さが)というものか。しかし、この体勢ならば、そんな思考を抱いてもおかしくないかもしれない。というのも…ベッド上に仰向けに寝転んだ茨の上に馬乗りで押し倒すような姿勢で名前が覆い被さっているからだ。愉快げに口角が上がっている。「茨ちゃんは彼女いないの?いたら姉ちゃんに紹介しなさいよ」という質問に「いない」と即答した茨は彼女の扇情的な格好を一瞥した。
「姉さん。服着ろ」
「やだ。風呂上がりで暑いし」
ノーブラで薄いキャミソール一枚と、脚を露出したショートパンツ姿は茨の目には毒だった。前屈みの姿勢になると胸元が大きく開き、豊満な乳房がちらりと見えてしまった。姉とはいえ、血の繋がりはないからこそ異性として意識してしまうもの。姉のことを性的な目で見てしまわないよう、彼女を引き剥がし、自身のシャツを彼女に頭から被せたまま茨は説教をし始めた。
「そういう格好でいられると目のやり場に困るんであります。自分と姉弟でいたいなら、弁えてほしいですね」
「つまり、姉ちゃんの身体に欲情するかもしれないということ…?ふぅーん…」
「話聞いてました…?」
冗談交じりに「よーし。一緒に寝よう」と茨を抱きしめた彼女だが、そのまま抱き竦められて耳元で妖艶に囁かれたせいで姉の余裕もなくなり、顔を真っ赤に染めて茨の腕の中から逃げ出した。
「そんなに姉さんは弟に襲われたいのでありますね」
「違います!だって茨ちゃんは可愛い弟で…そんな…エッチ、したりとかは…」
「自分はできますよ。姉さんとなら」
END