七種茨短編
七種茨
名前
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-「タイミング悪いなぁ…」
エレベーターに誰も乗っていないのをいいことに、思わず愚痴を吐いてしまう。何故なら今日は恋人の七種茨の誕生日なのだ。それなのに、朝から急な仕事が立て続けに入ってしまい絶望していた。取引先に出向かなければいけない案件だったりしたせいで、出社してすぐESビルを出ることを余儀なくされた。茨に会うことは叶わず、一番に「お誕生日おめでとう」が言いたかったのに…なんて泣きたくなった。午前が午後になり、予定していた最初の会議が終わり、昼の時間になって外の喫茶店で食事を取って…最後の訪問先を出た時には既に空が夕焼けに染まっていた。
「茨はどう思ってんだろう…?」
あの毒蛇が恋人に誕生日を祝って欲しくて…とかそんなのないか。と自己完結させていたのだが、この後自分の気持ちが奥底に沈むことになろうとはまだ知る由もなく…。18階のコズプロ事務所でエレベーターを降り、一番に目に飛び込んできた光景は茨が他のアイドル達にお祝いされている姿で。私からの祝福の言葉なんていらないんじゃ?と思ったし、あんずちゃん相手にデレデレしていたように見えてしまい、いじけモードに陥ってしまった。楽しげな彼らに背を向けて屋上へと向かい、ヘリポートの片隅で一人大きな溜め息を吐き出した。
「ほんとに付き合ってるんだよね?恋人には誕生日祝ってほしいものだよね…?」
身体の関係にもなっているわけだが、キスは片手で数えられる程度しかしたことがないし、ましてや一般的なデートをしたこともない。いよいよ茨と交際しているという自信を失いかけていた刹那、開いた扉から人影が。我関せずで俯いていると、ふいに温もりに包まれて寂しげな声が鼓膜を震わせた。
「やっと見つけた。自分から逃げるなんて、どういうつもりでありますか」
「本当は…私が一番最初におめでとうを伝えたかったんだけど、私がいなくても茨は楽しそうだったし…」
「べつに楽しくなんてありませんよ」
茨でも拗ねたりするんだなぁ。と、可愛くて口許を緩ませていた私の耳にとんでもない台詞が響いた。「ここで自分に襲われるか、言葉で自分を満足させるか…どちらを選びます?」なんて問われながら、勿論後者だ…と即決したのだが、茨の手は胸に触れており、そのままやわやわと揉みしだかれ同時に耳を甘噛みされ、堪えきれず甘い吐息が零れる。でも、抵抗したりはしない。大好きな茨に触ってほしいから。
「ん…っ。言葉で、満足…させる、からぁ…っ」
「こんなすぐに反応して…自分に触られて興奮しているんでしょう」
「そんなんじゃな …っ。やァ、ンン…っ。ぐりぐりしないでぇ…っ」
早く「誕生日おめでとう」と伝えたいし、今日のことも謝りたいし…などと考えているのに、茨は手を離すどころか行為がエスカレートしていくだけで。このままでは本当にここで襲われてしまう…。「私は襲われたいなんて言ってないのに」と苦し紛れの言葉も言い終わる前に壁に押さえつけられ、無理矢理ブラウスのボタンを外され、ぺろりと捲られてあらわになった胸に吸いつかれて甘い声が漏れた。
「ふ、ァ…っ。いばら…っ。こんなとこで…っ」
屋外でシてしまうかもしれない。このまま茨に抱かれてもいい。なんて、彼の愛撫を受け入れつつあったのだが、茨にあっさりと手を離されたせいで拍子抜けしてしまった。服の乱れを直されボタンも元通り留められて無言でされるがままになっていた私の顔を見て茨が笑った。
「そんな物足りない顔をして…。ここで襲われたかったのでありますか?」
「私の返答無視であんなことするなんてひどいよ」
「あーあ。こんなに濡れてる」と、スカートの中に侵入した彼の手でそこをなぞられた。てらてらと光る指先を見せ付けられて泣きそうになっている私は「茨なんて嫌い」と呟いた。こんなことを言いたいわけじゃなかったのに…と、ぎゅっと拳を握り締めて俯いていると優しく腰を抱き寄せられた。舌が重なる濃厚な口付けをされて、いよいよ本格的に茨が嫌いになり始めた。
「茨はやっぱり最低野郎かもしれない」
「久しぶりに名前と会ったらムラっときてしまったもので」
名前はいやらしくて魅力的であると饒舌に語られたせいで、恥ずかしくて顔が真っ赤に染まる。しかし、「それで…俺みたいな最低野郎は嫌いということが言いたいのでしょうか」と茨はくるりと背を向けて去っていこうとするではないか。咄嗟に彼のスーツの裾を掴んで引き止めたせいで茨は足を止め、振り向いた。
「ねぇ。帰って続きしよ?茨のそれ、苦しいでしょ?」
END