七種茨短編
七種茨
名前
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―「私と仕事、どっちが大事なの?」なんてことは訊いたりしない。というか、絶対「仕事」って言われると思うから、ダメージ受けたくないし。新婚初夜にワクワクと心躍らせていたのに、お仕事優先されてパソコンに茨を取られた私の不満は大きいぞ。そういう展開を想像してたのに放置かよ。と、いじけたくなった。私の旦那…七種茨は妻に対して塩対応だ。
「いいもん。浮気してやるもん」
リビングで寝る前にココア飲んでいても、私には見向きもせずにパソコンと向き合っている彼に捨て台詞のようにそんな言葉を残して、自室へと引っ込む。ベッドの上でスマホを弄る。こんな時は、茨の知り合い伏見弓弦くんに連絡してしまおうか。彼の場合、親切に愚痴を聞いてくれそうで、ヘタしたらほんとに浮気っぽくなってしまう気がする。かといって、Edenの誰かに相談してもいずれ茨自身にバレてしまうだろうし…全然浮気感がない。こうなったら、ハマってる乙女ゲームのイケメンに癒してもらうしかない!と、アプリ起動。このゲームの中じゃプリンセスだしな。お相手は隣国の王子だけど、頻繁に会いに来てくれるし、会えない時はフクロウ便で手紙くれるし。プレゼントも欠かさないし…うん、茨とは大違いだな。この王子となら、結婚しても夫婦仲円満にいきそうだ。
「浮気って…相手二次元じゃないですか」
「あ!返してよ。まだストーリー読みきってないのに…」
私の寝室にずかずかと入ってきた茨に、スマホを取り上げられた。「相手二次元とはいえ、茨くんよかイケメンだし。王子様だし」と悔しくなって王子を庇護していたら、ベッド上で彼の腕の中に閉じ込められた。あったかいし、なんか安心する…じゃない。私、絶賛浮気中(?)だったじゃん。もっと茨に焼きもち妬いてほしいのに…。なんて思っていれば、予想外の台詞が聞こえてきた。「これでも自分、相当焦ったんですよ」と。抱きしめる力が強くなった。やがて頬を撫でる手が顎にかけられ、優しい口付けが落とされた。その後、舌で唇を割られそのまま舌が入ってくる濃厚なものに発展した。苦しくなって彼の胸を押し返すけれど、やめてくれない。それどころかもっと深くなって…漸く唇が離れていく。息を乱している私を眺め、満足げに唇に弧を描く茨をぽかぽかとパンチしてみる。
「生身のほうがいいでしょう?俺と違って、王子とは触れ合えませんから」
久しぶりにキスしたからか、頭がぽーっとする。あぁ…好きだなぁ。なんて、私は単純すぎだろうか。「いや…でもね、この王子様…茨くんに見た目似てるんだよね」まぁ、中身全然違うけどさ。とか思っていれば、茨からゲーム禁止令が出されてしまった。「今後、そういう類のゲームは禁止です」と。「やだやだ。どうせ茨くん構ってくれないもん」ふーんだ。拗ねてやる。とお布団にくるまってお触りを防いでいると、なんと、そのまま抱えられて彼の部屋へとお持ち帰りされてしまった。
END