七種茨短編
七種茨
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―茨が忙しいのなんて分かっているつもりだったし、仕事の邪魔はしたくなかった。しかし、同棲を始めてから二ヶ月が経過する。彼は元々スキンシップが豊富な性格ではないから仕方ないのかもしれないが、近頃は身体を重ねる頻度がめっきり減ってしまったように感じられる。口付けを交わすことだって滅多にない。日に日に寂しくなってきた彼女は、灯りが漏れている茨の部屋の扉の隙間から、こっそりと様子を窺ってみた。机でパソコンと向き合っている。おやすみのキスくらいしてもいいだろうかという欲望を押し殺し、そっと足音も立てずに立ち去った。温かい飲み物でも飲んでから寝ようと考えながら、ケトルに水を注いでいる時だった。
「自分に用があったのではないのですか?」
「べつに。用なんてないよ」
不貞腐れたような言い方をしてしまう。忙しいのなら無理して構ってくれなくてもいいという気持ちと、少しくらい触れ合いたいという欲望がせめぎ合う。椅子に座ってお湯が沸くのを待とうと、茨に背を向けると、腰に腕を回されて離してくれなくなった。「名前は聞き分けがよくて、滅多に我儘を言わないのでありますし…」と、頬を撫でる掌、指先でくいっと顎を持ち上げられる。真正面にある彼の顔は疲労が滲んでおり、徹夜続きなのかうっすらと隈が出来ている。そんな茨相手に「我儘なんて言えない」と告げようとした口は、彼のもので塞がれて…口に出ることはなかった。「私のことはほっといて」と、つっけんどんな台詞も、茨からしてみれば可愛いものだった。ぎゅうっと抱きしめられて、彼の匂いと温度に満たされて幸せだった。これくらいで満足してしまう自分も単純だなぁ…と彼女は感じていたが、茨はこんなものでは全然足りないというように何度も唇を重ねてきた。舌が絡まる熱い口付けに、苦しくなって彼の胸板を押し返すが、中々やめてくれず、息も絶え絶えになった頃、漸く唇が離された。
「急にどうしたの?」
「ご不満でしたか?名前はこういうのを望んでいたのでしょう?」
「いいの。私のご機嫌取りなんてやめてよ」
腕に抱かれたまま、名前がムッとした表情で茨を見上げる。同棲したら毎日ラブラブな生活が送れると夢を見ていた自分が悪いのだ。と、彼女は一向に彼の優しさに甘える気は無いらしい。「自分、相当溜まってるので…嫌がってもやめてあげませんから」と、キスに意識を向けられていれば、彼の右手が服の中に侵入し、胸に触られた。唇は重なったまま、吐息さえも奪うような口付けと同時に胸を揉みしだかれ敏感な箇所を弄られ、下半身をもぞもぞとさせてしまう。「こんな所でやだ。ベッド行こ」と促すも、茨はやめてくれず。服をたくし上げ、乳頭に吸い付きながら、下へ伸ばされた手はショーツの中へ、そして指が蜜壷へ挿入された。溢れる愛液が、茨の指を濡らし、発せられる水音が…いやらしさを増幅させていく。
「ねぇ、茨…っ。やだァ…っ」
「こんなに腰をがくがくさせて…もう限界なのですか?」
久しぶりの営みは、随分とアブノーマルなもので、イケないことをしているという背徳に身体が疼いてしまう。彼の指が奥へと進み、激しく出し入れされ、胸の頂をぺろりと舐められた彼女は弓なりに背中をしならせてキッチンで最初の絶頂を迎えてしまった。「茨…意地悪すぎるよ」と蕩けた顔で文句を言うが、茨は名前のあまりにも乱れきった姿に、欲情を抑えきれずにいた。茨の部屋のベッドの上。火照る身体を持て余し、彼の手でもっと乱されていく。耳元で言葉攻めされながら、くりくりと頂を指で刺激されて甘い嬌声が漏れるだけで、「やめて」と拒絶するのは最早不可能だった。蕩けきったそこは、彼のものを求めており、それが避妊具を付けていないことを問題視できる程の理性が残っていなかった。
「そんなに感じて…ほんとに淫乱でありますね」
「淫乱じゃ、ないもん…っ」
「ほら。自分に全て委ねていいんですよ」
END