七種茨短編
漣ジュン
名前
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―「なんすか?夜這いでもしにきたんすか?」
まったく、ジュンくんは可愛げがないなぁ。と唇で口を塞いでやる。風呂上がりの彼は自室で扇風機の前で涼んでいた。ベッドに敷いてあるのはひんやりとするマットである。残念ながら彼女のベッドのシーツは普通のもので。涼みにきたというのが本音である。だが、彼は名前の格好を一瞥して口角を上げた。「格好がやらしいんすよねぇ」と腰を抱かれる。そのまま彼の上に乗り上げる体勢で密着すると「積極的すぎるんすよ」と照れて顔を背けられてしまった。だが、そんなことはお構い無しに彼の鍛えられた上半身に触れながら顔を近付ける。「最近、全然イチャイチャしてない」と不満を漏らせば、彼はバツが悪そうに表情を曇らせて謝罪してくれるのだ。「それは、お互い忙しいから仕方ないっすけど。不満な思いをさせてすんません」と。そもそも、新婚であるにも関わらずこんなに冷めきっているのはどうかと思うのだ。
「おひいさんの我儘は聞くくせに、私の我儘は聞いてくれないよね。ジュンくんは意地悪だ」
たまにはデートがしたい。と我儘を言ったが、「外は暑いし、人混みの中は疲れるでしょう?」と言いくるめられてしまったのはつい最近のことだ。おひいさんの買い物の付き添いだってしているくせに、何故私と出掛けるのは乗り気ではないのだろう?とムスッとした顔をしていれば、顎を掬われ口付けを落とされた。嬉しい筈なのにあまり嬉しくないのは、それが御機嫌取りのようなキスだったからだ。「ジュンくんは本当に私のこと好きなの?」その言葉を聞いて、焦ったように彼は反論してくる。「好きじゃなきゃ結婚してないっすよ。今更何言ってんすか?」と。「そのわりには、全然求めてくれないじゃん。ジュンくんの愛情が感じられない」不貞腐れたようにそう呟けば、苦笑した彼に抱きしめられた。「じゃあ、こういう触れ方をすれば愛情を感じてくれるんすね?」といやらしく身体をまさぐられる。1枚の布越しに弱い所を攻められ、ぴくりと反応した彼女と視線を合わせ、ジュンが問いかける。
「こんなにすぐに反応して…そんなに抱かれたかったんすか?」
「そんなことない。ジュンくんのばか」
身体を重ねるだけが目的ではなかった。もっと夫婦としてラブラブな日常を過ごしたかっただけだった。背中を向けて逃げようとすれば、手を捕まれ、再び彼の腕の中に拘束された。後ろから腰に手を回され、逃げたくても逃げられない。「暑いからって露出度が高いんすよ。名前が肌を晒していいのは俺の前だけでしょう?だから…そんな買い物には付き合いたくないだけっすよ」と、ここで漸くジュンの本音が明らかになった。「水着はジュンくんに選んでもらおうと思ってたんだけどな…」女友達と海に行く約束をしていた。もう去年の水着は着られない。と水着を新調しに行こうと計画していた。しかし、ジュンはその言葉を聞いて一気に不機嫌になってしまった。「名前、もう人妻でしょう?俺のいないところで水着着るなんて許しませんよぉ?」
「でもEdenのみんなで海に行くっておひいさんが言ってたよ?」
「その時は…ずっとパーカー羽織っててください」
「理不尽」
END