七種茨短編
Eden
名前
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―「「普段何を食べてるの?」って訊かれたらオーガニック食品って答えてもらおう。凪砂先輩のイメージ壊れないし」
音楽番組に出演するにあたり、彼らのプロデューサーが不安に思っていること。それは、MCからの質問にユニットのイメージを壊さずに答えられるのか。というトーク力だったりする。「閣下の台本に記載しておきましょう」と茨は答えるが、当日の凪砂が本当にそう答えてくれるとも限らない。プロデューサーの苦悩は続く。こんな作戦会議は、同じクラスに所属している名前と茨だけで行われることが多い。「タモさんは、あの番組でユニットのリーダーに質問してくるんだよ。だから、他のメンバーよりも凪砂先輩のトーク力だけ何とかしておけばいいと思うんだよね」
―「凪砂くんてあまりにも生活感ないけど、いつも何食べてるの?」
モニター越しに映るEdenを見つめながら彼女は心の中で呟く。「キター!」と。予想通りの質問がされ、打ち合わせの通りならここで「オーガニック食品」と答える筈だが、「昨日は、Edenのみんなでお好み焼き食べたんだよ」と明け透けに彼は答えてしまう。「庶民の食べ物も、たまにはいいね!タモさんもそう思うよね!」とそれに被せる形で日和が発言し「タモさんにタメ口やめて〜っ」と彼女は叫びたくなった。「名前が作ってくれる料理、すごく美味しいんだ」と、ついにこちらにまで飛び火した。そんな発言をされたら、全国のEdenファンから妬まれてしまう。と彼女は冷や汗をかいた。会場から聞こえる「いいな〜」という相槌も、自分に対してのそれにしか思えない。そんな会話をしてEdenのイメージを壊してしまったと思ったが、歌えば印象はがらりと変わるもので。会場からの黄色い歓声はすごかった。
「握手してください」
出番が終わり帰ってきたと思えば、開口一番に茨から握手を求められ手を握られた。気分が高揚してプロデューサーと握手をしたくなったのかと思ったが、彼の言葉にその期待は台無しにされた。「女性アイドルに握手を求められましてね。早く消毒したかったんです」と。事も無げにそんなことを言いのけるところは流石毒蛇とでも言えようか。「私は消毒液代わりか」と彼女がムッとした表情になれば、途端に褒め殺しが。「女性アイドルよりも名前のほうが100倍美しいですよね。何ですかね。あの品のなさは」「茨。言い過ぎじゃねぇっすか?」と、彼らを労う言葉をかける暇もなく、とんでもない会話が繰り広げられていく。「ねぇ。今日のぼくもかっこよかった?」「茨ばっかり狡い。私も握手して」と日和と凪砂が彼女に詰め寄る。
「とりあえず、Edenの皆さん。全国放送でプロデューサーの名前バラすのやめましょうね」
「ぼくらが宣伝してあげたおかげで有名人だね!いい日和!」
「Edenフリーダムすぎる。プロデューサーの手に負えん」
「お好み焼き発言といい、もう諦めるしかねぇっすよ」
END