七種茨短編
七種茨
名前
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―「何してるんですか?名前姉さん」
レッスン室に入った茨の視線の先には漣ジュンにお姫様抱っこをされているEdenプロデューサーがいる。名前と茨は歳は違えど昔馴染みである。彼女は茨にとって綺麗なお姉さんであり初恋の相手でもあった。そんな彼女がそのままの体勢で嗜虐的な笑みを滲ませている。
「ジュンくんの筋トレ手伝ってるの。茨ちゃんも抱っこしてくれるー?」
「いや、茨には無理なんじゃないっすかねぇ?」
せせら笑うジュンに加え、「貧弱貧弱ぅ~」と煽るような言動で茨を挑発している彼女の表情は本当に楽しそうである。ジュンの腕の中にいる彼女を攫うように奪って腕に抱いた彼は「名前さん一人くらい楽勝ですよ」と唇に弧を描くが、それとは対象的に茨が無理をしているのが小刻みな揺れから彼女に伝わっていた。
「茨ちゃん、腕ぷるぷるしてる~。私が重たいだけなのかな…」
けらけらと笑う彼女は自嘲気味に自分の体重を気にしたが、すかさずジュンが「べつに重たいとは思いませんでしたけど」とフォローを入れた。当の本人はといえば、間近に迫る初恋の相手の顔に、手から伝わる感触に、なんとも言いがたい想いが巡っており彼女と視線が重なると照れたような苦笑を浮かべた。それもこれも、「この距離だと茨ちゃんにチューできるね」と歳上の余裕を見せた彼女のせいだと言っても過言ではない。
「茨をからかうの得意っすね」
俺は何を見せられているんだろうと、呆れたような瞳でジュンが溜め息をつく。しかし、茨にとってはそれどころではなかった。冗談混じりで「チューできる」と言っていると思えば、不意打ちのように柔らかな唇が頬に触れ、茨は言葉をなくし動揺のあまり彼女を床に下ろした。
「茨ちゃんってば、ほっぺチューくらいでそんなに照れちゃって可愛いねぇ~」
「べつに照れてませんよ」
口では否定しつつも赤面しながら視線は泳いでおり、説得力皆無な茨の様子に、ジュンの考え着いた先はやはり恋慕の感情だった。普段の調子を狂わされている茨を見る限り、それは明確なものである。自覚させてやろうと、いたずら心が刺激され、彼は口を開いた。
「茨ってほんと、名前さんのこと好きっすね」
「なに!?茨ちゃんツンデレか!」
END