クリスマス
名前
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―クリスマスケーキの材料を買いに街に訪れた名前は人でごった返す駅前のショーウィンドウの前で立ち止まった。ガラス越しに置かれている煌びやかなアクセサリーに夢中で背後に迫った影には気付かない。
「…お姉さん、お一人ですか?」
ふいにかけられた声に反応して振り向けば、歳が近そうで軽薄な雰囲気の青年が微笑みながらこちらを見つめている。有無を言わさず手首を掴まれて、歩きだそうとした彼に抵抗しようと絞り出した彼女の声と重なって聞きなれた誰かの声がした。それと同時に、青年の手が離れていく。
「俺の連れに何してんの?」
―「羽風先輩…っ」
羽風薫の登場後、慌てたように青年は走り去っていった。さり気なく名前の肩を抱いた薫に面食らった様子で、彼女は彼と視線を合わせた。「ありがとうございました」とお礼を伝えた名前の頭にぽんと薫の手が乗せられ、間近に綺麗な顔が迫る。
「名前ちゃんが俺以外の男からナンパされてるの見て焼きもち妬いちゃったよ」
羽風先輩は、きっと今から女の子とデートに行くんだろうなぁ…と考えていた彼女の耳に予想外の台詞が投げかけられた。クリスマス前に女の子にフラれたらしい。その後に続いた台詞はいつもと同様だ。
「せっかくのクリスマスだし、俺とデートしてくれないかな?」
いつもならば当然お断りしているが、今日はそうでもない。先程助けてもらった事も影響して寛容な心持ちになっている。毎回断っていて悪いなぁ…という気も相まって、彼女は初めてデートの誘いを受け入れた。
「え、本当にいいの?名前ちゃんとのデートが実現するなんて夢みたいだよ」
「助けて頂いたお礼といってはなんですが」
私みたいなのをデートに誘う先輩も悪趣味ですね。と自嘲的に笑った名前の手を薫がぎゅっと握った。傍から見たら恋人同士のような雰囲気の彼らはクリスマスムード漂う街へと繰り出した。
「それじゃあ、カフェでお茶しようか。オススメのとこ連れて行くから」
「羽風先輩…」
手、離してもらってもいいですか。いつもの名前なら言っていたであろう言葉。だが、今日の彼女は一味違っていた。この状況が楽しくもあり嬉しく感じて、自分より大きな薫の手を握り返していた―
END
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