斎宮宗
名前
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-「お兄ちゃんからのひょーかがほしいんじゃないの」
斎宮宗には、それはそれは可愛い妹がいる。兄が彼女の為にこしらえたヒラヒラとしたワンピース姿で部屋の中でクルクルと回っている。兄から褒められるのは飽きた。というか、本命は宗ではないのだが、本人は知らないからこそ瞳を輝かせて妹の名前を見つめている。「美しいね。名前は僕の最高傑作なのだよ」と大層な褒め言葉を並べられて顔を引きつらせているのだが、宗は満足げに笑っている。
「今日はマド姉はいないの?」
兄のことは好きだけど、一番好きなのはお人形のマドモアゼル…通称マド姉である。キョロキョロとマドモアゼルを探す妹の前に現れたのは勿論、マドモアゼルを連れた宗なのだが。その途端、パァっと表情が明るくなった。可愛い妹の期待に応えないわけにはいかない。兄の心は複雑だった。
「宗くんの新作のお洋服ね!とっても似合ってるわ。可愛い」
「マド姉〜!ありがとう〜っ」
「僕が褒めた時より嬉しそうなのは何故だね」
「だって、大好きなマド姉にひょーかしてもらえてかんむりょう(?)なの」
「感無量なんて難しい言葉を知っているね。名前は僕よりマドマアゼルのことが好きなのかね」
マドモアゼルがライバルならば、まぁ仕方ない。と思えるだろうが、目の前の光景に、宗は悔しすぎて奥歯を噛み締めた。名前が笑顔で抱きつきに行った相手こそ、彼のユニットパートナー影片みかである。確かに名前は影片のことも兄のように思っているかもしれないが、自分にはそんな風に甘えにきてくれないじゃないか。と、宗は納得いかず拳を握りしめていた。
「お師さんのお手製をいつでも着られるなんて羨ましいわぁ。名前ちゃんよぉ似合うてるよ」
「みかくん、ぎゅ〜っ」
しゃがんで視線を合わせた影片に名前がぎゅうっと抱きついた時、彼は宗からの羨ましげな眼差しが向けられていることに気付いていた。しかし、問題の名前はみかの持ってきたクマのぬいぐるみに夢中である。「クマちゃんのお洋服みかくんが作ったの?すごいねぇ〜」と褒められた影片も満更でもなかったし、クマを腕に抱く名前の姿もとても可愛らしかった。
「名前ちゃん。お師さんにもぎゅうっとしてあげてな」
「お兄ちゃーん!」
なんだかんだ言っても名前は兄である自分のことが好きなんだな。と歓喜したのも束の間…「私のお洋服と一緒のやつ。マド姉もお揃いで作ってほしいな」と、名前はどこまでもマドマアゼル愛が強かった。それでも宗の作る服を気に入っていて、兄の技術力を尊敬しているのは確かなのだ。しかし、宗と違って裁縫の腕前はからっきしだったりする。宗とみかの作る作品を見るのは好きだが、自分も作ろうという気にはならない。
「私、おつかいに行ってくるね」
「僕も付き添うのだよ。可愛い名前を一人で行かせるわけには…」
「お兄ちゃんもみかくんも付いてきちゃだめ!」
可愛い名前が一人で歩いていたら誘拐されるかもしれない。と心配で堪らない彼らは隠れて名前を尾行したのだが、彼女のおつかい先はベーカリーだった。そこは、クロワッサンが美味しいと評判の店だ。名前の好物もクロワッサンだったのか。と、宗は血の繋がりを感じていたのだが、ウキウキと店を出てきた名前の大きな独り言が聞こえてきて一気に上機嫌になった。
「お兄ちゃんへのお礼にクロワッサン〜♪」
-「さくらの夜いろはにと♪」
廊下から聴こえてきた鼻歌にぴくりと反応したのは兄の宗で、この歌は幼馴染みの鬼龍紅郎の所属するユニット紅月の曲だ。Valkyrieの曲は歌うのが難しいと名前に言われたことがあるが、もしかしたら妹の大本命は鬼龍なのではないかと新たな疑惑が…。「名前が紅月の曲を歌っているね」と宗がぽつりと呟いたところ、「名前ちゃん昨日、お風呂の中で礼賛歌歌ってる声したんやけどなぁ」と影片から衝撃の一言が…。
「名前。僕らの曲は歌ってくれないのかね?」
「練習中なんだけど、歌ってて気になることがあったの。グラズヘイムって…なぁに?あとね〜エインヘリャルっていうのも名前わかんなかった」
「歌詞の意味が気になってるんやね」
「北欧神話の説明からしなければならないのかね」
「ほくおーしんわ?」
END