斎宮宗
名前
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-「君はまた…用もないのに僕の顔をジロジロと眺めて、とんだ変態だね」
変態とか、宗くんに言われたらおしまいな気がする。君に比べたら私なんて普通だよ。と、心の中では思っているけれど、絶対口には出さない。そう、私は彼の言うように特に用事があるわけではない。今日も宗くんのご尊顔を拝みにきただけだ。私は宗くん(の顔)が好きなのである。中身はアレだけれど、顔がいいので許容範囲だ。もし私がお人形さんみたいな美少女だったら彼もこんなに塩対応しない筈なのにな。自分の平凡な顔立ちがうらめしい。
「宗くんに会いたかったの。確かに大した用事はないけど…」
「名前ちゃんたら、宗くんのことが大好きなのね」
「僕は嫌いなのだよ」
一人二役まじすごいな。私はマドマアゼルのことも好きなので、宗くんがあまり会話してくれなくても気にしていない。うーん…でも好きな人から「嫌い」とか言われたらさすがに落ち込むな。「俗物と喋るだけ無駄なのだよ」とか言われなくなっただけ大きな進歩なんだし、あの時も「本当は俗物なんて思ってないのに、宗くん照れ屋さんだから。ごめんね」とマド姉が言っていたし。私はこんなにもショックを受けているのに、彼ときたらレース編みをする手を止めることなく見事にこなしている。
「せっかく焼きたてクロワッサン作ってきたのに…。もう帰る」
「何故それを早く言わないのだよ」
クロワッサンの威力は絶大だな。私には見向きもしなかった宗くんが目の色変えて向き合ってくれた。「だって、宗くんが私のこと嫌いとか言うから」と、告げる声は涙声になってしまった。宗くんは私のことなんか眼中に無いのだから仕方ないよね。と自分に言い聞かせて唇を噛みしめていると、席を立った彼が私に何やらフリフリの服を当てがってきた。キスできそうな距離感で見つめられて心臓が跳ねる。近くで見てもほんとに顔が整っているな。沈黙が痛い。いっそここから消えてしまいたい。
「君の為にこしらえたかいがあった。よく似合うのだよ」
「宗くん…このフリフリ服が私に似合うって本気で思ってるの?」
私は彼が作るお洋服は好きだけど、見る専なので自分が着たいわけじゃないけど、宗くんの気持ちが嬉しいな。「君は中々整った見た目をしているのだから、そんな格好ばかりしていては宝の持ち腐れなのだよ」と、なんか褒められてるのか貶されてるのか分からなくなってきたな。そんな格好とは、私が今着ているラフなパーカーのことなんだろうな。動きやすさ重視の普段着なんだからしょうがないと思うけど。せっかくだし、着てみようと、彼から服を受け取って着替えることにした。しかし、私は何故か躊躇いもなく宗くんの目の前で服を脱いでしまったのだ。脱いだといっても胸の辺りまでだけど、彼に肌を見せてしまったわけで。「待ちたまえ。何故平然と着替え始めるのだね」とぴしゃりと指摘されてしまった。
「ごめんなさい、宗くん。なんかうっかり…」
「君のそういうはしたないところはどうかと思うね」
フリフリ服に着替えて本当は宗くんに褒めてもらいたかったのに、一番初めに褒めてくれたのはばったり出会したみかくんで。部屋に戻るのが怖くなってみかくんの後ろに隠れていたけど普通に宗くんに見つかった。「何を隠れているのだね」と腕を引かれて全身値踏みするように眺められて、思わずピシィと固まった。「服に着られているね」とか「馬子にも衣装なのだよ」とか言われると思ったから。あの宗くんに顎クイをされて思考が停止した。
「あ、の…宗くん?」
「おほん、なかなかやるね……。この僕にそう言わしめるとは勲章ものと思って良いのだよ」
宗くんに初めて褒められて、初めて触れられて…嬉しくてキャパオーバーした私は、逃げるように部屋を飛び出した。床にへたり込んで蹲る。宗くんのことが大好きだって自覚してしまったから、もう今日は顔を合わせられない。(焼きたてクロワッサンは宗くんの部屋に置いてきた)
END