影片みか
名前
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―「みかくんは失敗作なんかじゃありません!」
幼馴染みである影片みかを追って、この学院に転入してきた私を蔑むような眼差しで目の前の男は独特の笑い声を上げている。
「こんな俗物を相手にするだけ無駄なのだよ」
手芸部の部活動見学に誘われた私は早々に後悔していた。この人が彼のユニットの相方だと分かってはいるけれど、どうにも腑に落ちない。先程まで私は人形相手に会話をしていた。漸く自ら喋ってくれたと思ったのに…。「影片のような失敗作がそんなに大事か」と酷い言葉を吐き捨てられたものだから耳を疑った。
「名前ちゃんは俗物なんかやない」
みかくんは本来ならばこの人に逆らう事などしないのだろう。それ故に、男は顔を顰めて苛立ちを露にしていた。しかし、泣きそうな声音で否定してくれた彼は私の手を引いて手芸部の部室を後にした。
―「お師さんがあぁ言うのはいつもの事やねん。せやから、名前ちゃんが怒る必要あらへんよ」
人見知りな彼がこんなに懐いているのは珍しい。第一印象は最悪だったけれど、彼は気を許している相手のようだ。昔は私の傍が彼の居場所だったのに…と、切なさに胸を締め付けられて瞳を伏せた。
「みかくんにとって…もう私は必要ないのにね。自分勝手でごめんね」
「そんなわけないやろ」
夕陽が照らす窓辺で、懐かしむような表情を滲ませた彼に抱き竦められた。彼の体温が直に伝わってきて胸の鼓動が速くなる。彼を好む人間は私だけで十分だ。これが独占欲というものなのだろうか。一度は手放してしまいそうだった温もりが此処にある。
「名前ちゃんが隣に居てくれる未来なんて、想像すら困難やったのに…」
ありがとう。優しい声色で囁いた彼は私を抱く腕に力を込めた。そのお陰で私の涙が溢れ出したとも気付かずに…。
END