逆先夏目
名前
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―「私の恋愛運が上がらないのは夏目のせいだ」
彼に言われた通り、ラッキーカラーのピンクを様々な箇所に取り入れてみたのに、一向に恋愛運が上がる気配がない。インチキ占い師め。学院の地下書庫に降りてきた私は、その一室で怪しげな実験に勤しんでいる逆先夏目を見つけた。
「それはボクの占いのせいじゃなくて、名前自身に問題があるんじゃないのかナ」
「うぅ…夏目ってほんっと意地悪だよね。つむぎ先輩とは大違い」
彼の実験の邪魔をしないように少し離れた場所から話しかければ、隣に座っていいと許可が出たので隣の椅子に座らせてもらい、続けて会話を交わしている。
「どうしてあの人の名前が出てくるのかナ。それに、どうやって此処に入ってきたのサ?」
「つむぎ先輩が協力してくれたの。夏目が此処に居るって教えてくれて、鍵も開けてくれたし」
先輩をこき使っていた夏目の代わりに謝罪して、その役目を代わって頂いた。彼のご所望の植物図鑑は私が持っている。訝しげな表情をしていた彼も、私が此処へ訪れた事情を理解したことだろう。
「名前ってセンパイの事好きなノ?」
「さぁ、どうだろうね」
誤解しているのなら、少しからかってやろう。という悪戯心に火がついた。いつも意地悪されているお返しとばかりに真意の読めない笑みを彼に向ける。つむぎ先輩の事を褒める程、彼の表情が歪んでいくのを眺めるのは面白い。ついには、植物図鑑のページをめくる手も止まった程だ。
「つむぎ先輩は私の事可愛いって言ってくれたんだよ。夏目は絶対に言ってくれないけどね」
これは作り話ではない。つむぎ先輩が「君のような可愛い女の子が俺なんかに優しくしてくれるわけが…」とか、腰の低い事を呟いていたのは事実だ。だから、少し自慢させてもらおう。きっと、今の私の顔にはいい笑顔が浮かんでいるだろう。
「そんなのお世辞に決まってる。名前は見る目なさすぎだヨ」
この後、つむぎ先輩の事をけちょんけちょんに貶された。同じユニットの先輩の事をここまで貶せるものなのか。流石に可哀想でつむぎ先輩に同情する。確かにこんな夏目に惚れている私は男を見る目がない。彼の言うとおりだ。
―「どうして近頃、子猫ちゃんて呼んでくれないのさ。夏目のばか」
私は唇を尖らせて不貞腐れたように彼に視線を向けた。私と視線を合わせた彼は、にやりと口角を上げた意地悪な笑みを浮かべながら「名前の恋愛運がアップしないのは確かに僕のせいだヨ」と衝撃的な台詞を告げた。それに対して、私は驚きを隠せずにパチパチと目を瞬かせた。
「名前の恋愛の応援なんてしたくなかったんダ。相手が誰であろうとネ…」
「その相手が自分だとは思わなかったの…?」
「名前はボクを嫌ってると思ってたかラ」
こんな事なら嘘なんてつかずに占ってあげればよかった。と、急にしおらしくなった彼に歩み寄り、背中に密着して首筋に口付けを落せば…いつも意地悪な彼が照れたようにクスクスと笑った。
「次は本気で占ってね。夏目ちゃん」
「今回ばかりは子猫ちゃんの勝ちだヨ」
END