逆先夏目
名前
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―「ボクに言いたい事があるなら言いなヨ」
「そういう煮えきらない態度はセンパイそっくりだよネ」と言われてしまってショックだ。私の兄は優しくて妹に甘いけれど、あの優柔不断な性格は似たくない。ましてや夏目くんに「兄そっくり」と思われてしまったなんて…。そう…何を隠そう私はSwitchの青葉つむぎの妹なのである。その事実を隠せていたから、夏目くんは私と付き合ってくれているんだと思っていた…少し前までは。しかし、あの夏目くんがそんなことに気付かないわけもなく。彼は全部知っていたんだ。
「いや…その〜…夏目くんが女性にモテすぎて…」
夏目くんは先程、事務所の女性アイドル達に囲まれてキャーキャー言われていたし、ベタベタされていたから、私は超絶不機嫌なのだけど。夏目くんなら「そんなの気にしてバカじゃないノ」とか言いそうだよな。だから何も言えずに「珈琲買いに行ってくる」なんてその場から去ろうとした。…無理だったけど。
「〜…っ。夏目くんは人目も憚らず抱きしめるようなタイプじゃないのにね」
「自分でも柄じゃないって思ってるヨ。名前が泣きそうだったから、こうしたくなった」
下手すりゃ兄や宙くんに見られたりするかもしれないのに、事務所内で抱きしめるなんて大胆すぎて違う意味でドキドキした。いつもの夏目くんじゃないな。抱きしめられたり、愛の言葉を囁かれることは滅多にないし。性的な方向にいじめられているからね。メディア向けの顔は、「愛してるよ。子猫ちゃん」とか「ボクが暖めてあげよう」みたいな感じだけど、私に対してはそのサービス精神は皆無なんだよな。
「夏目くんが優しい…。こんなに愛情向けられたの初めてかもしれない」
「なにそれ。ボクが名前のこと愛してないみたいな言い草だネ」
一瞬甘い雰囲気になったものの、すぐに腕を解かれてしまっては何だか物足りない…。夏目くんは私のことを愛していないかもしれない。「好き」とか「愛してる」なんていう愛の言葉は一度も聞いたことがないから。恋人のことを信じられないなんて良くないと思うけど、夏目くんって腹の底が知れない感じだしね。
「やっとボクの方向いた…」
スマホに集中しすぎていた私は、唐突な温もりに包み込まれて顔だけ振り向かせた。今の私は彼に会いたいような会いたくないような…という心境なので、つっけんどんに「離して」と呟く。離れるどころか、むしろ抱きしめる力が強くなった。彼は私が見ていたスマホの画面を一瞥して「そんなの信じて馬鹿じゃないノ」と。「ボクは浮気なんてしてないヨ。その女性から付き纏われていただけで、そこに書かれてること全部ガセネタ」と彼は告げる。『逆先夏目、女性アイドルと密会か』なんていう見出しのニュースを見つけてしまい、一人でショックを受けてムッとしていたら渦中の人物が勝手に自宅に入ってきた。
「離してって言ってるのに…」
「だって、名前がそんな嘘を真に受けてるかラ」
「ご機嫌取りのキスなんていらない」
キスで私の機嫌が直ると思ってる。不貞腐れてるだけで、ほんとは夏目くんに抱きしめられるのもキスされるのも好きだけど。単純な女とか思われたくなくて怒ってるふり。…しかし、エッチすぎる口付けと好き勝手に谷間に顔を埋めてこられたから必然的に視線が重なった。
「夏目くん女の子にモテるんだから私じゃなくても抱かせてくれるんじゃないの?」
「ボクは名前がいいんだヨ。ボクに抱かれてる名前は素直で可愛いかラ」
「ふ、ァ…っ。夏目く…っ、やぁ、ンン〜…っ」
トップスを脱がされて背中のホックを外されてブラが肩から抜け落ちる。胸を鷲掴まれながら乳頭を執拗に愛撫される。甘噛みされたり、指先を掠めるようなそれにカラダの奥が疼いてしょうがない。つっけんどんな態度をとっていたって、カラダで愛してほしくて拒めない。ぬぷ、といやらしい音を発して沈められるそれ。夏目くんて私の胸見ただけでこんなになるの…。と、彼の剛直を挿入されながらちょっと嬉しくなったり。
「おっぱい触っただけで勃起するんだね」
「名前の胸ってエロいかラ。それに、ちょっと触っただけでこんなに溢れてる自分はどうなノ?」
腰を打ち付けられながら官能的なキスをされる。キスだけでもエッチなのに、荒々しく野性的に抱かれるのも気持ちよくて、このまま溶けてしまいそうな気がした。セックスの時の夏目くんはいつもより色気があってすごくかっこいい。悔しいけど、私が感じるところを全部分かってる。
「ひ、ァン…っ。やだァ…っイっちゃいそ…っ」
―情事後にお風呂に入ってる時の夏目くんが優しくて、不覚にもキュンとした。湯船の中でお湯に浸かりながら抱きしめられて耳元で甘い言葉を囁いてもらった。「好きだよ。子猫ちゃん」と。こんな言葉ひとつで悦べる私はチョロいんだろうか。さて…それよりも、大変なことが一つ。あの日、私が夏目くんに抱きしめられていた場面を目撃していた兄に「可愛い名前の彼氏が夏目くんだなんて、絶対認めませんよ」と、夏目くんとの交際に猛反対されているのだ。
END
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