逆先夏目
名前
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―「ババくさい格好してるね」
「げっ…夏目…」
この格好はあったかいんだ。学校は休みだし、どうせ家から出ないんだからダサい格好で炬燵に入っていてもいいだろう。と…いつも通りの日常を送っていた。しかし、突然の来訪者にこてんぱんにディスられて泣きたくなった。今の私の服装はセーターの上に半纏を羽織ったとても芋臭い姿なのだ。女子力皆無な私を相手に、「子猫ちゃん」と呼んでこない夏目は相当引いているに違いない。近所に住んでいる夏目とは、こうして勝手に家に入ってくるレベルで親しくしている。(主に母親同士が)
「どうせ夏目は部屋着にジェ●ピケ着てるような女の子と付き合ってんでしょ?」
「名前も着たら似合うと思うよ」
なんとなく気まずくてキッチンに逃げた。本当は夏目に彼女なんていて欲しくないけど、不貞腐れているような言葉しか出てこない。彼の前では可愛くなれない。「冷え性なんだもん」とか「どうせババくさいですよ」とか言ってしまう始末。私だって可愛い部屋着で迎えてみたかったけどさ。突然来る夏目が悪いんだもん。ほうじ茶とお茶菓子を手に戻ってきてみれば、私の全身を眺めてせせら笑いを浮かべていた。先程から語尾を歪めた話し方をしていないから、私を貶す言葉は全部彼の本心なのだろう。
「炬燵の中で足を蹴らないでくれるかナ」
「夏目が悪口ばっかり言うのが悪い」
「そういえば、名前って零にいさんのファンだったんだネ」
夏目が手にしていたものは私の部屋に置いていた筈の朔間零くんのアクリルスタンドである。きっと私がキッチンでお茶の用意をしていた間に勝手に入ったに違いない。零くんならば夏目と違って私にも優しいだろう。なんて主張したら、また彼に笑われた。ほんと私に対して意地の悪い男だ。「名前は零にいさんを理想化してるんだと思うヨ」と夏目は忌々しげに呟いていた。
「ボクという幼馴染みが傍にいるのに、零にいさんがいいなんて妬けちゃうナ」
「夏目…距離が近いと思…っ」
私のファーストキスはこの瞬間奪われた。そう、夏目に口付けをされたのだ。ほんの少し触れるだけのものだけれど、私が無言になるには十分だった。夏目の真意はわからない。かくいう私もショックなのかどうかわからない。気持ちの整理がつかないというやつだ。どんな顔をしていいかわからなくて、咄嗟に彼に背を向けた。膝を抱えて俯いて唇をなぞった。
「名前のファーストキスを奪ったのはボクの自己満足かもしれないネ」
「こんな男を好きだと認めるのは無理だな…」
「認めなヨ。ボクのことが好きだって。認めて楽になりな」
「そう言われると意地でも認めたくない」
「ねぇ。この格好だと全然ムードないヨ」
確かにこんな芋臭い格好の女相手じゃ性欲も沸かないだろうな。と半纏を脱ぎ捨てた。抱きしめられると直に温もりが伝わってくる。私が夏目を好きだと認めたところで、彼は私のことなど恋愛対象として見ていないかもしれない…と不確かな関係に虚しくなる。しかし、私の唇は再び夏目に奪われたのだ。今度の口付けは触れるだけなんて可愛いものじゃなく…舌が絡み合う淫らな口付けで。
「夏目くん…どこ触ってんですかねぇ」
「なんで下着つけてないのかナ?」
END