青葉つむぎ
名前
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―「夕飯くらい俺、一人でも何とか出来たのに…すみません」
「つむぎ、私相手に腰低すぎだよ」
彼のこういう性格は今に始まった事ではないが、私には気を使わないでほしい。自己評価の低い彼がアイドルやってるなんて今でも信じられない。彼はお家事情が複雑なので近所に住んでいる私は何かと彼を気にしてしまうだけだ。今だって、一緒に夕飯を食べようと、おかずの入ったタッパー片手に彼の家に押しかけた。
「俺みたいなゴミ虫に優しくしてくれる意味が分からない…」
若い子怖い!なんて言われて彼を睨んだ。だって、同い歳なんだから。彼は臆病で神経質で、扱いが難しい人物に成長してしまったようだ。昔はこんな性格じゃなかった筈だ。彼に構う理由は恋慕の感情を抱いているから。なんて言えるわけがない。
「ほら、俺に優しくする理由訊いたら答えてくれないでしょ?」
「そんな事より、肉じゃが冷めるちゃうから早く食べなよ」
私はこの問いに答えた試しがない。この想いをひた隠して、いつも話題をそらしている。自分でも酷いとは感じるけれど、本音を伝えて今の関係を壊したくないという恐れ故の行動だ。
「名前と食べるご飯は美味しいですね」
その一言で頬を綻ばせた私は単純だろうか。好きな人に、自分の作った料理を食べてもらえて幸せなのに…そんな私に追い討ちをかけるように、彼は微笑んでくれた。
―「このまま泊まってもいい…?」
なーんて冗談だけど…と半分本音を零した私に動揺した彼は「そんなの絶対いけませんよ」と耳まで真っ赤に染めていた。今夜は私も家に一人ぼっちなのに…と口実を作っても無駄なようだ。玄関先で私を見送ってくれようとしているのに、意識してほしくて…こんな悪あがきをしてしまう。
「つむぎは相手が私でも欲情する?」
我ながら悪質な質問だとは思う。だが、これは男女の間では大事な事なのではないだろうか。こんなに羊みたいな彼でも狼になるのか知りたかった。私とそういう事が出来るか訊きたかったのだ。彼の首筋に腕を絡ませて、その反応を窺ってみる。
「名前相手に何とも思わないなんて、俺には無理ですよ」
「じゃあ、私の初めてはつむぎが貰ってくれるね?」
軽々しくそういう事を言ってはいけません。と狼狽える彼の唇に、ほんの一瞬触れるキスをしてから踵を返した。
優しい君を困らせてごめんね―
END
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