2wink
名前
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―「ゆうたくん、隣の席の女の子だけは俺達が入れ替わってるの気付いてたよ」
思わず耳を疑った。だって、その日は互いにヘッドホンを忘れた日で…アニキとの見分けがつく人なんて居ないと思っていたから。たとえクラスメートだろうと俺達双子を見分けられる人が居るとは思っていなかった。だからこそ、隣の席の名前ちゃんが俺と兄貴の入れ替わりに気付いていたと訊いて、彼女と話がしたくなった。
「隣の席なんだから、それくらい気付くよ」
「そうかなぁ…?俺達そっくりだし目印もつけてなかったのに、すごいよ」
比較的大人しめな彼女は控えめに笑っていた。興味が引かれたと同時に、その笑顔に惹かれ始めていたのだと感じる。
「俺だけじゃない。アニキも吃驚してたよ」
「私が二人を見分けられるのは特別な理由があるんだけどね…」
彼女はその理由を教えてはくれなかった。本当はその言葉の続きを知りたくて仕方なかったのだけど、彼女が躊躇うのなら訊くのはよそうと思った。
―「あぁっ!…ゆうたくん、ごめんね」
出し抜けに、一つの教室から出てきた人物とぶつかってしまった。その人物こそ、俺が今…最も気になっている名前ちゃんで…。そして、また一つ気付かされた。突然ぶつかって、よく顔を確認してもいないのに…どうして俺だと判ったのだろう?この場合、アニキと間違えたって不思議じゃない。
「日々樹先輩が、私に衣装を押し付けてきたから…逃げてきたの」
男の子の友也くんに着させるのは可哀想だから、自分が引き受けようと思ったらしいが日々樹先輩が持ってきたのはフリル付きのドレスだったらしい。「演劇部も大変だね」なんて同情した。しかし以前、演劇部の劇に出てきた衣装姿の彼女はとても似合っていたのを思い出した。
「俺は、名前ちゃんのドレス姿見てみたいけどなぁ…」
「ゆうたくんがそう言ってくれるなら着ようかな…」
「あのさ、前から訊きたかったんだけど…どうしてすぐにアニキと俺の違いに気付くの?」
「好きな相手を間違えるわけないじゃない。当たり前でしょ」
不意打ちの告白に驚いて、言葉も出ない俺の目の前でハニカミながら笑う彼女の頬は紅色に染まっていた。「今のは忘れて!」と今更、撤回されるわけにはいかない。
「『今のなし』は認めないよ」
だって、俺も君を好きになっちゃったんだから―
END
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