鳴上嵐
名前
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※夢ノ咲入学前
―その名を耳にして、途端に憂鬱な気持ちに支配されていく。男性モデルと一緒に撮影すると訊いて、もしかしたら…と期待した私の考えが甘かったのだ。
「あんまりゆうくんに近寄らないでよ。アンタ、自分がゆうくんと吊り合えるとでも思ってんの?」
そんなに親しくもない私に、こんな罵声を浴びせたのは紛れもなく先輩モデルの瀬名泉だ。遊木くんとは少し世間話をしていただけなのに、なんて思い込みの激しい人だ。
―「泉さんと一緒に撮影なんていいなぁ…」
ここにも、あの人の見かけに騙されている女子が一人。私に羨望の眼差しを向けるくらいなら、いっそのこと代わってほしいものだ。そんな折、私が待ち望んでいた彼の声が聞こえて振り向いた。
「名前ちゃんったら、今日は泉さんと撮影一緒らしいわね」
「なんて災難なんだろう」
彼、鳴上嵐は私のモデル仲間だ。見た目も性格も申し分無い彼は瀬名泉とは大違いだと感じる。うなだれる私の様子を見て、彼は苦笑を滲ませた。
「泉さんを嫌うなんて珍しい娘ね」
「私はあの人の本性を知ってるからね」
落ち込む私を慰めようと頭を撫でてくれる彼には申し訳ないが、胸の鼓動が速くなる一方だ。嵐くん、本当に綺麗だなぁ…なんてうっとりしてしまう程の美形の彼にこんな気持ちを抱いているのは烏滸がましいと分かっている。それこそ、吊り合えるわけがない。
―「ミネラルウォーター、買ってきてって言ってんの」
先輩を気遣えないわけ?なんて横暴な対応をされて、好きになれるわけがない。やっぱり嫌いだ。あんな人に好かれている遊木くんも大変だなぁなんて、ぼんやり考えながらスタジオを出た私を出迎えてくれたのは彼だった。
「名前ちゃんったら、泣きそうな顔してる」
嵐くんが優しいからいけないんだ。その優しさに甘えてしまうから…。泉さんじゃなくて、彼と一緒に撮影が出来たらどんなに良かったか。なんて思いながら一歩下がる…いや、下がれなかった。
「嵐くん。抱き合ってると誤解されるからさ…」
彼からの抱擁は嬉しいけれど、変な噂が出回る恐れがある。そんな事になったら大変だと思い、離れようとするも彼の腕がそうさせてくれない。
「アタシは名前ちゃんとそういう噂になっても構わないけど」
名前ちゃんは嫌でしょ?なんて、勘違いされて否定の意を示す為に首を振った。え…嵐くん、私と噂になってもいいの?と、戸惑う私は為す術もなく彼の腕の中に居た。
「アタシはね、名前ちゃんが泉さんを嫌ってるのを知って安心してたの」
女の子のモデル仲間が皆、瀬名泉に好意を抱いているからって私まで一緒にしないでほしい。お陰で想い人にまで誤解されて、いい迷惑だ。
「私は、嵐くん以外誰も好きになれないよ」
「あらやだ。アタシがあんなに妬いてたのが馬鹿らしいじゃない」
END