鳴上嵐
名前
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―交際していたわけでもないのに、未練がましいなぁ…とは自分でも思うけれど彼を忘れられない。男性モデルの中でも特に仲の良かったあの人は、現在アイドルとしても活躍している。
「鳴上くん、今はアイドルもやってるらしいね」
モデル仲間の噂話から掴んだ情報は彼が夢ノ咲学院に在籍しているというものだ。人に見られる仕事を好む彼ならアイドルはぴったりの職業だ。彼の活躍を知って嬉しくなる反面、遠い存在になってしまった気がして寂しくなる。
「名前、鳴上くんと連絡取ってないの?」
「だって、嵐くんと最近会ってないから…」
本当はそれだけが理由ではなかった。彼を好きだと自覚した瞬間から、今までみたいに振る舞えなくなった。一方的に想いを寄せても報われない事なんて分かっている。彼は私のことなんか眼中にないだろうし…。
―「夢ノ咲学院のプロデュース科?」
そこが女子生徒を募集していると聞きつけて、私は決心を固めた。数日後には、夢ノ咲学院の入学手続きを済ませていた。今度はプロデューサーとして、彼を支えたい。そしてその活躍を近くで見守りたい。それが、例え独り善がりな感情だとしてもよかった。
―「どんな女の子が来たのかと思ってたの。そしたら名前ちゃんが来るなんて吃驚したわァ」
彼と同じクラスになれたのは喜ばしいのだが、何とも違和感を感じる。以前はこんなにオネェ口調で喋っていなかった筈だ。それでも、彼はあの頃と同様に綺麗で凛としている。明るくて気さくなのは変わらないけれど、昔の方がもう少し男の子らしかったかもしれない。
「ねぇ、名前…膝枕してよ」
彼が近くに居るのはいいのだが、同じクラスの凛月くんが眠たいと言いながら私の背中に抱きついてくるのには困ったものだ。嵐くんにも触られた事ないのに、他の男の子に密着されてどうする事も出来ずに戸惑ったまま身を固くした。
「駄目よ、凛月ちゃん。名前ちゃんが困ってるでしょ?」
私から凛月くんを引き離してくれた彼は、私と視線が絡むと苦笑を滲ませた。「アタシですら名前ちゃんとハグした事もないのに」なんて拗ねたような言動にドキリとさせられた。
「ナッちゃんがヤキモチ妬くなんて珍しいね」
「ヤキモチとかそういう理由じゃないよ」
そう。そんなわけがないじゃないか。彼はモデル仲間だった私を気にかけてくれているだけ。そう思って凛月くんに返答をしたらそれに重なって声が響いた。思いがけない言葉に何も言えずに口を噤むしかなかった。
「凛月ちゃんの言う通りね。名前ちゃんを取られたくないっていう完全なるヤキモチだわァ」
「嵐くん…それ、本気で言ってるの?」
私の震えた声とは対照的に、はっきりとした声音で返事を返された。「嘘つくわけないでしょ」と。
「私ね…嵐くんに会いたくて、この学院に来たんだよ」
「あらやだ。名前ちゃんのそういう可愛いところ、アタシは大好きなのよ」
END