瀬名泉
名前
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―「うちの泉ちゃんが毎回ごめんね」
廊下の端で行きずりに出会ったのは、モデル時代からの顔見知りの遊木真。通称、私の恋敵。なんて言ったら彼は驚くに違いない。
「謝らないで下さい。それは名前さんのせいではないですから」
「いや、謝るよ。モデル仲間なのに止められない私が悪いんだもん」
そう、悪いのは私だ。想い人が男に走っているのは私に魅力が無いせいだ。瀬名泉の残念な部分を承知の上で恋慕の感情を抱いているのだが、綺麗な顔立ちをしている真くんには敵わない…。
「名前さんは泉さんとお付き合いしてるんじゃ…「ゆうくん、なに言ってんの」
真くんの台詞に重なって声が響いた。その声の人物こそ、瀬名泉その人である。私を一瞥して唇に不敵な笑みを浮かべていた。ゆうくんと私が一緒に居たのが気に食わないのだろう。
「名前みたいなのと付き合ってるわけないでしょ」
「私だって、泉ちゃんなんかお断りだよ」
モデル時代から、彼の性格の悪さは知っていた。周りのモデルの女の子はそれを知らないようで、彼に惹かれていたみたいだけど…。何度か一緒に仕事をして、垣間見えた彼の一面は興醒めそのものだった。本来ならば百年の恋も冷めていたであろう。
「何それ。チョ~うざぁい」
「モデル仲間の間では、お二人の噂が流れていた程ですよ」
さらりと爆弾を放った真くんは私達の雰囲気を察して去っていった。廊下には不機嫌な彼と、私だけが残された。一階の廊下の隅に居るので人目につかない場所だ。口喧嘩するのにも相応しい。
―「泉ちゃんと噂になるとか最悪」
「俺の台詞取らないでよねぇ。名前って昔っからそう」
紡ぎ出される彼の言葉に、否定すらままならず口を噤む事しか出来なかった。昔から、ヤキモチ焼きで想いを欝積させてばかりだ。彼の性格が伝染しているのだろうか。
「あの頃も、俺が他の女子と喋っただけで不機嫌になったりしてさ…嫉妬してたよね」
「勘違いしないでよ。嫉妬なんかしてない!」
泉ちゃんの性格の悪さがバレないか心配だっただけ。なんて口からでまかせ言って、本心は隠したまま。あの頃から、私達の関係は何も進展していない。それを痛感して胸が苦しくなった。
「名前って、ほんと可愛げないねぇ」
「泉ちゃんも、ほんと意地悪だよね」
「俺に意地悪されるの好きなくせに…」
「好きじゃない」そう言えたらどんなに楽だろうか。残念ながら、それは叶わない。彼が言っていたのは間違いじゃないのだから…。何だか悔しくて、唇を引き結んだ。
「ブッサイクな顔になってるよ」
END