鳴上嵐
名前
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―「アンタほんとウザイんだけどぉ」
瀬名泉は慈悲がない。私には一切優しくない。そもそも、泉さんに相談する事が間違いなのだろう。「はぁぁ…嵐くんかっこいい…」なんて、思ってしまう私には彼は決して振り向かないだろう。だって嵐くんは王子様になりたいわけじゃない。心が乙女だからプリンセス側なのだ。私は中身が女子らしくないし長身だし王子様になることも可能かもしれない(謎の自信)。でも嵐くんの理想はきっと椚章臣先輩みたいな男性なのだ。見た目も似せてしまうくらいに好きなのか。と、うんうん唸って悩んでいたあの頃も近くにいた泉さんにディスられた。「うざい」って。
「アンタの悩みっていつもなるくん絡みじゃん。そんなに苦しむなら諦めたらいいのに」
「諦めたいですよ。わかってるけど…」
諦めようとして、他の男性モデルと付き合ったり、中学の時の同級生と付き合ったりしたけれどどれも長続きしなかった。それはきっと恋じゃないから。一目視界に入れるだけで心臓が跳ね上がって、瞬間湯沸かし器の如く一瞬でかぁっと顔が熱くなったり。こんな症状が出るのは全て相手が嵐くんの時だけ。嵐くんを好きになって早数年…私は他の男なんて愛せないのだと自覚させられることとなった。
―「私もうモデルやめる」
「あぁ、そう。やめれば?」なんて苦笑気味の泉さんは私の真意をわかっている故だろう。それに比べて「名前ちゃん本気なの?」と困惑した表情を見せる人物が。鳴上嵐その人である…。私が辞めたところで嵐くんの日常は何も変わらないだろうに。どうしてそんなに悲しそうな顔をするの…。私はアナタをすっぱりと諦めて楽になりたいのに。
「才能あるのに勿体ないわよォ?…っていうのは建て前ね。アタシは名前ちゃんと会えなくなるのが辛いの」
「え…っ。そんな…嵐くんからしたら、私なんぞ道端の石ころみたいなもんでしょ」
卑屈になってるわけじゃなくて、ほんとにそれくらいの存在だと思っただけ。なのに嵐くん優しいから「アタシの中で名前ちゃんは大事な存在なのよ」と女神のような笑みを向けてくれた。切ないけど、成仏できそう…なんて天に召されそうになっていたのに。その後に続く言葉を聞いて涙腺が崩壊した。泉さんには「泣き顔ブッサイク」とか笑われそうだからこの場から逃げ出したかったのに。
「名前ちゃんの恋人役として一緒に撮影した時…この関係が現実ならいいのに。なんて思っちゃったのよねェ。名前ちゃんの前だといつものアタシじゃいられなくて情けないわァ」
「はァ…?チョ~うざぁい!アンタら両想いってことぉ?」
齟齬?ってやつだなこれは。と展開を呑み込めずにいた私は泣き顔ブサイクすぎて泉さんに「泣き顔ブッサ」と本当に言われた。瀬名泉許せぬ。「名前ちゃんは可愛いわよ」とフォローしてくれた嵐くんの優しさを見習え。
END