瀬名泉
名前
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-「アンタなに不貞腐れた顔してんの」
「ぶっさいくな顔になってるよ」と、からかう彼の名は瀬名泉。奥歯を噛み締めたまま何も言えずに視線を彷徨わせている名前は惨めで泣いてしまいたかった。至近距離で目線を合わせられて泉の綺麗な顔が近付く。「女の子にチヤホヤされてた泉ちゃんが悪い」と悔しげに呟くと、彼は呆れたような笑みを見せる。泉と同期モデルである名前が長年片想いしている相手こそ目の前の彼であるが、本人はきっと気付いていない。だから、焼きもちを妬いたところで馬鹿にされてしまう。
「そんなことで怒ってるわけぇ?」
「だって泉ちゃん、私には優しくないのに…」
「俺はゆうくん以外には優しくしないから。ていうか、他の女子にも優しいつもりはないんだけどぉ」
二言目には必ずゆうくんという単語が飛び出す。なので、本当のライバルは他のモデルの女の子ではなく遊木真である。なんで恋敵が男なんだよふざけんな。と名前は思っているが、勿論口に出せるわけもなくずっと悶々とさせられている。Knightsの活動はどれもチェックしていたが、泉の握手会に参加した時なんか「なんでここにいるわけぇ?」と不機嫌な態度を取られたしアイドルにあるまじき塩対応だった。なんでこんな人を好きになってしまったんだろうか。それに報われなさすぎる恋に振り回されるなんて青春を無駄にしているんじゃないか。と、数々の出来事を思い出した彼女は自暴自棄になっていた。
「泉ちゃんなんか嫌いだもん…!」
勢いに任せてスタジオを飛び出してしまった。これからすぐに撮影がある。しかも、泉と一緒に…だ。泣いたらメイクが崩れてしまうと我慢していたが、その頬には涙が伝っており既に手遅れだった。泉と一緒に撮影ときいた時は嬉しかった筈だ。それなのに「どうせ他のモデルと代えられちゃうだろうな」と今回のチャンスを諦めようとしていた。彼に合わせる顔がない。こんな泣き濡れた顔を見られたら「チョ〜ブサイク」とか言われるに決まっている。悲しくて、惨めで、虚しくて、しゃがみこんだまま動けなくなっていた。道行く人々の雑踏だけが響く中で、一つの足音が正面で止まった。
「こんなとこにいた!って…なにその顔!」
「なんか俺が泣かせたみたいじゃん。チョ~うざぁい!」と、お小言を言われながら無理矢理手を引っ張られて連れ戻された。椅子に座らされて頬に彼の手が重なる。涙で崩れた化粧は泉が直々にやり直してくれた。「俺にここまでさせるとかチョ~生意気なんだけどぉ〜! 」と怒っているわりに触れる手つきは優しくて。「俺と一緒に撮影なんだから、迷惑かけないでよねぇ」と苛々している声すらも嬉しくて、彼女は泉をじっと見つめた。
「泉ちゃん、ごめんなさい」
「泉ちゃんなんか嫌い…なんだっけ?」
「違うぅ。大好きだけどぉ…って、あ…っ!今のなし!」
「ちょっとぉ、泉くん大好きって素直に言えないわけぇ?」
END