瀬名泉
名前
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-「それね。なんかキャラ変わってて気持ち悪いっていうのは同感するけど。アンタの趣味を疑う」
久々にモデル業に復帰した私は、想い人の変貌について旧知の間柄である瀬名泉さんに相談したところ、冒頭の台詞を返された。
「昔の嵐くんは眼鏡かけてて茶髪で…もっと男らしかったんですよ」
「それはさぁ、男っぽいなるくんが好きだったんでしょ?今のなるくんを相手にしても尚、同じ気持ちになれるわけ?」
「二人きりの時は男の顔になる嵐くんとかすごくいい 」
「アンタ結構重症だね。夢見がちすぎるんじゃないの?」
二人で謎の盛り上がりをみせていた時、「名前ちゃんと撮影なんて嬉しいわぁ」と現れたのは、話題の中心人物である鳴上嵐だ。彼が姿を見せた途端、私の顔がみるみるうちに赤く染まっていくのを泉さんは見逃さなかった。これから嵐くんとペアで撮影なのに、どうなる事やら。「アンタそんな真っ赤な顔で、これから撮影なんて出来るの?」と。泉さんの台詞に負けじと「撮影までにはどうにかします」と断言したものの、いざ本番になっても顔の火照りが引かない。隣には嵐くんが居るのに迷惑をかけてしまう…と焦燥感に駆られた瞬間、スタジオにずかずかと入ってきた泉さんが嵐くんに一言。「名前の奴、なるくんとじゃ撮影になんないから、俺と交代ね」なんて、残酷な言動をされてジト目で泉さんを見つめる。物わかりのいい嵐くんは「そういう事なら仕方ないわね」なんて納得したように遠ざかっていってしまう。
「俺が近寄った途端に顔色が戻るとかすっごい失礼なんじゃない?俺が相手じゃドキドキしないってこと?」
普通の女の子なら、こんな場面で泉さん相手に胸をときめかせたりするんだろうなぁ。なんてぼんやり考えながら、嵐くんとペアで撮影というチャンスを台無しにしてしまった悲壮感に打ちひしがれていると、横に居る彼に肩を抱かれた。びくりと肩が揺れる。そしてどうやら、私は彼の機嫌を損ねてしまったようで「無言の肯定とかチョ〜うざぁい」と言われてしまった。チョ〜うざぁいとか言ってくるわりに、その距離はかなり近い。鼻先が触れてしまいそうな程に顔を寄せられ、整った顔が近付くと、ドキドキするのではなく魅入ってしまう。嵐くんも綺麗だけど、泉さんも引けを取らないなぁ。なんて思っていたら、撮影が始まってしまった。なんだか今日はいつもの泉さんじゃない気がする。彼は女子と撮影だからってこんなに近付いたりしない筈だ。このまま雑誌に載ってしまえば、全国の瀬名泉ファンから反感を買われ、モデルとしての私の好感度ダダ下がりだ。それだけは避けたい。と、泉さんに一言申し上げる。
「あの、泉さん。必要以上に距離が近いんですけど…」
効果はいまひとつどころか、全く効いていないようだ。カメラさんに「恋人っぽい感じでお願いしますね〜」なんて注文されたからといっても、私は納得出来ない。何故なら、こんなにイチャついている場面を嵐くんに見られているからである。戸惑っている私の様子を見て楽しんでいるかのような彼に腰を抱かれ、顎を掬われて思わず瞳を閉じた。キス…されるかと思ったそんな刹那、軽くデコピンされて目を見開く。「アホ面」なんて馬鹿にされた私は多分呆けた顔をしていたんだろう。「キスされると思った?」と余裕のある顔で問いかけてくる泉さんはなんて意地悪なんだろうか。
「泉さん相手にドキドキするなんて絶対ありえません」
「今の自分の顔色見ても尚、そんな事が言えるの?」
化粧室の鏡に映る自分の頬が赤く染まっているなんて信じられない…いや、信じたくない。ついでに言うと、「お似合いのカップルだったわよ?」なんて嵐くんから誤解された褒められ方をされたのも信じたくない。
END