InsteadLost~sub story~
五国大会議。それはこの世界を統括している五つの国の王達が集まり、非常事態を解決する為の緊急措置である。
それが今、正に開かれていた。
今回はエアストウワンの王女、ヒィの招集で他の王達は集まっていた。
だが題材は全員見当もついていなかった。
「今回、皆に集まってもらったのは他でもない。」
全員が固唾を呑む。
「今は、何月だ?」
ヒィが問いかける。
「四月…ですが、何か民達の畏れになる事でも?」
ピッドナイトが答えるが、ヒィは首を振る。
「君達、何か忘れてはしないか。」
その問いに五人は頭を悩ます。
「あ…エヴェイユ学園の推薦枠…?」
トゥーエンがぽつりと呟くが、それも違うようだ。
痺れを切らした様子でヒィが言った。
「違う!!我は花見がしたいのだよ!!」
その言葉は会堂に残響となるほど空気を凍らせた。
「ヒィ…まさか、そんな事の為に五国大会議まで開いたというのか…?」
ロンタゼルスが引き気味で聞く。
「無論!!」
するとエルルンが冷めた表情で、
「そういう事ならわたくし達は失礼致します。ピッド、行きましょう。」
「姫様、ちょっとお待ち下さい!」
「僕も…外に出るのは…ちょっと…。」
トゥーエンも乗り気のない返事をする。
そこでパウジェが皆を宥める。
「まぁまぁ、皆落ち着こうか。ヒィちゃんだって何も考え無しな訳ではないだろう。こんな時代だからこそ、五つの国の結束を固めようって事じゃないのかな?」
「(パウジェ殿ナイスフォロー…!)」
ロンタゼルスはパウジェの言葉に少し安心したが、
「いんやー?我はただこのメンツで桜を肴に酒を酌み交わしたいだけだが?」
ヒィの間の抜けた返事に一層頭を抱えた。
ヒィはとうとう地べたに寝転んで、
「やーだやだやだー!!皆で一緒に花見するんだぁー!!」
子供のように駄々をこね始めた。
それを見兼ねたエルルンが呆れながら皮肉を言う。
「はぁ…エアストウワンは王を変えた方が良いのではないですか…。」
するとヒィはむくりと起き上がり、不貞腐れて言った。
「だって、ロンたんは常に前線に出てるし、パウジェ君とは今までそういうのした事無かったし、トゥーエン君はいつも研究で忙しそうだし、エルルン君とピッドナイト君は行政で忙しそうだし。
今年の桜は今年しかないのだよ!!今は今しかないのだよ!!後から後悔しても遅いんだ!!」
その言葉に、エルルンの頭を亡き両親が過った。
「あの…僕、行っても、いい…。」
トゥーエンがポツリと呟く。
それに続くようにピッドナイトが、
「そうですね。これも良い思い出になるかもしれませんね。」
ロンタゼルスは参った、という様子で
「全く…ヒィは昔から我儘だからな。」
パウジェは楽しそうに、
「誰が何を持って行くか、決めないとね。」
どうやら全員の意思は固まったようだ。
ピッドナイトはエルルンに微笑みながら確認する。
「異論はありませんね、姫様。」
「もう、仕方がありませんね。」
満更でもない表情でエルルンは答えた。
一週間後───。所はフェアリー。正に満開の桜が咲き乱れていた。
「流石、花の妖精が居るだけあって、見事だなぁー。」
「皆様ー!こちらでーす!」
ピッドナイトが特別に誰も居ない特等席を取ってくれていた。
「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」
生い立ちも性格も異なる六人の王達による花見が始まった。
「っくうー!!いいねぇー、桜を肴に酒は!!」
「ヒィ王女、ひっく、もう少し威厳を保ちながら呑めないのですか!ひっく!」
「あぁ、姫様、こんなに甘酒を呑まれたのですね…一本までと昨日あれほど…!」
「ピッドナイト殿も日頃から大変であろう、こっちで一緒にどうであろうか?」
「今日は無礼講だよー。」
「!!この団子…うちの国で作ってるのより美味しい…!」
その後も、ロンタゼルスとピッドナイトがお互い慰めあったり、
トゥーエンがパウジェに美味しい団子の製法を詳しく聞いたり、
ロンタゼルスの腹にマジックで顔を描こうと追い掛け回すヒィをエルルンとピッドナイトが必死に止めたりと、はちゃめちゃだが各々存分に楽しんでいた。
「全く、貴方という人は…!」
「でも、エルルン君だって楽しんでいるのだろう?」
口煩く説教するエルルンにヒィがニヤニヤしながら聞く。
その問いにエルルンは視線を逸らし、
「ま、まあ、たまにはこういうのも悪く…ない、かもしれません…。」
そう言った彼女の頬が赤かったのは、きっと酔いのせいだけではなかったのだろう。
それが今、正に開かれていた。
今回はエアストウワンの王女、ヒィの招集で他の王達は集まっていた。
だが題材は全員見当もついていなかった。
「今回、皆に集まってもらったのは他でもない。」
全員が固唾を呑む。
「今は、何月だ?」
ヒィが問いかける。
「四月…ですが、何か民達の畏れになる事でも?」
ピッドナイトが答えるが、ヒィは首を振る。
「君達、何か忘れてはしないか。」
その問いに五人は頭を悩ます。
「あ…エヴェイユ学園の推薦枠…?」
トゥーエンがぽつりと呟くが、それも違うようだ。
痺れを切らした様子でヒィが言った。
「違う!!我は花見がしたいのだよ!!」
その言葉は会堂に残響となるほど空気を凍らせた。
「ヒィ…まさか、そんな事の為に五国大会議まで開いたというのか…?」
ロンタゼルスが引き気味で聞く。
「無論!!」
するとエルルンが冷めた表情で、
「そういう事ならわたくし達は失礼致します。ピッド、行きましょう。」
「姫様、ちょっとお待ち下さい!」
「僕も…外に出るのは…ちょっと…。」
トゥーエンも乗り気のない返事をする。
そこでパウジェが皆を宥める。
「まぁまぁ、皆落ち着こうか。ヒィちゃんだって何も考え無しな訳ではないだろう。こんな時代だからこそ、五つの国の結束を固めようって事じゃないのかな?」
「(パウジェ殿ナイスフォロー…!)」
ロンタゼルスはパウジェの言葉に少し安心したが、
「いんやー?我はただこのメンツで桜を肴に酒を酌み交わしたいだけだが?」
ヒィの間の抜けた返事に一層頭を抱えた。
ヒィはとうとう地べたに寝転んで、
「やーだやだやだー!!皆で一緒に花見するんだぁー!!」
子供のように駄々をこね始めた。
それを見兼ねたエルルンが呆れながら皮肉を言う。
「はぁ…エアストウワンは王を変えた方が良いのではないですか…。」
するとヒィはむくりと起き上がり、不貞腐れて言った。
「だって、ロンたんは常に前線に出てるし、パウジェ君とは今までそういうのした事無かったし、トゥーエン君はいつも研究で忙しそうだし、エルルン君とピッドナイト君は行政で忙しそうだし。
今年の桜は今年しかないのだよ!!今は今しかないのだよ!!後から後悔しても遅いんだ!!」
その言葉に、エルルンの頭を亡き両親が過った。
「あの…僕、行っても、いい…。」
トゥーエンがポツリと呟く。
それに続くようにピッドナイトが、
「そうですね。これも良い思い出になるかもしれませんね。」
ロンタゼルスは参った、という様子で
「全く…ヒィは昔から我儘だからな。」
パウジェは楽しそうに、
「誰が何を持って行くか、決めないとね。」
どうやら全員の意思は固まったようだ。
ピッドナイトはエルルンに微笑みながら確認する。
「異論はありませんね、姫様。」
「もう、仕方がありませんね。」
満更でもない表情でエルルンは答えた。
一週間後───。所はフェアリー。正に満開の桜が咲き乱れていた。
「流石、花の妖精が居るだけあって、見事だなぁー。」
「皆様ー!こちらでーす!」
ピッドナイトが特別に誰も居ない特等席を取ってくれていた。
「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」
生い立ちも性格も異なる六人の王達による花見が始まった。
「っくうー!!いいねぇー、桜を肴に酒は!!」
「ヒィ王女、ひっく、もう少し威厳を保ちながら呑めないのですか!ひっく!」
「あぁ、姫様、こんなに甘酒を呑まれたのですね…一本までと昨日あれほど…!」
「ピッドナイト殿も日頃から大変であろう、こっちで一緒にどうであろうか?」
「今日は無礼講だよー。」
「!!この団子…うちの国で作ってるのより美味しい…!」
その後も、ロンタゼルスとピッドナイトがお互い慰めあったり、
トゥーエンがパウジェに美味しい団子の製法を詳しく聞いたり、
ロンタゼルスの腹にマジックで顔を描こうと追い掛け回すヒィをエルルンとピッドナイトが必死に止めたりと、はちゃめちゃだが各々存分に楽しんでいた。
「全く、貴方という人は…!」
「でも、エルルン君だって楽しんでいるのだろう?」
口煩く説教するエルルンにヒィがニヤニヤしながら聞く。
その問いにエルルンは視線を逸らし、
「ま、まあ、たまにはこういうのも悪く…ない、かもしれません…。」
そう言った彼女の頬が赤かったのは、きっと酔いのせいだけではなかったのだろう。