InsteadLost~sub story~
とある日。
ラファガがスピサを呼び出した。
いつにも増しておどおどとした態度だ。
「よわよわ先輩~。オレも暇じゃないんですけど?」
舞い上がる内心とは裏腹にスピサは急かす。
覚悟を決めてラファガは用件を口にする。
「あ、明日さ…。一緒に、夏祭りっ…行かない…?」
しどろもどろになりながらも、勿論嫌じゃなかったら、と言葉を足す。
ラファガの用件を聞いた瞬間、スピサの頭は真っ白になった。
承諾はしたものの、どんな言葉を返したのか自分でも覚えていない程に。
ラファガと別れても未だ冷静になれないスピサは、どうせ他の後輩も誘ったのだろうと疑り、普段口も聞かない同僚が群れを成していたので裏を取った。
だが誰しもがそんなことは知らない、そもそもその日は二人以外は警備に当たる筈だと声を揃えた。
その後、スピサの寮室では───。
「夏祭りって何!?二人きりって何!!?」
元貴族のスピサはそもそも夏祭りがどういった催しなのか知らない。
その上ラファガと二人きりと考えると、頭の中が渋滞してパニック状態だ。
手には、街の本屋で買ってきたハウトゥー本が握りしめてある。
その本が恋人向けだとも知らずに、読み進めていく。
「浴衣?っていうのを着るものなのか…へぇ、意外と楽しそう…。」
しかしある頁を開いた途端にスピサの頭はとうとう爆発する。
そこには、
"花火の中、キスを交わしたカップルは永遠の愛が実るかも!?"
「いやいやいや!!!!ないから!!!きききキス…とか…ないし…カップルでさえ、ないし…。」
徐々に小さくなる声には寂しさが混じっていた。
一方、ラファガの寮室で───。
「はぁあ~…スピサに無理させちゃったかなぁ…?」
偶然か、彼が手にしていたのもスピサが読んでいた本と全く同じものだった。
そして例の頁を開くと、ラファガの頭も爆発した。
「なっ…キ…!!?いや…スピサは気持ち悪いだろうし、そういうの。デート…でもないしね…。」
ラファガは、スピサが嫌がるようなことだけはしたくないのだ。
本当は二人きりで夏祭りに行くのも、自分勝手だったかもしれない。
「「あーもう、どうすればいいんだー!?」」
二人の部屋から放たれた叫びは、寮にいた他の騎士達を困惑させたという。
夏祭り当日。
微かな記憶を辿り、待ち合わせ場所に着いたスピサはラファガと無事合流する。
「あ、スピサ。良かった、おれだけ浴衣で浮かれちゃったかと思った…。」
ラファガはシンプルな黒い浴衣に赤い帯を締めており、彼の大人びた魅力を更に映えさせていた。
「かっ…、よわよわ先輩にしては、まぁ馬子にも衣装ってやつなんじゃないですか…。」
本音が漏れかけたスピサは、柄の入った紫の浴衣に白の帯、襟足を小さく結わえて、どこか色気漂う佇まいだ。
「ありがとう、スピサもすごく…綺麗だよ。」
褒め合ったものの、照れくさくなった二人に少しの沈黙が流れる。
「す、スピサは夏祭り初めてでしょ?案内するから、行こう。」
「あ、ちょっと待って下さいよ!?」
スピサは見たことのない世界に迷い込んだように、あれは?これは?と目を輝かせてラファガに聞いてくる。
楽しんでいるスピサの様子にラファガも嬉しくなる。
「これが綿あめですか…!甘くてふわふわで口に入れるとすぐなくなっちゃうんですね…!!」
露店で買った綿あめを食べているスピサを微笑ましく見つめるラファガ。
小さな口で一生懸命頬張っているその姿がどうしようもなく愛おしく、しかし"すぐなくなる"という言葉に自分もそのような存在であって欲しくない儚い気持ちとで葛藤していた。
「きゃあああ!!ひったくりいい!!!」
「「!!!」」
甘い時間は突如として壊され、騎士として声の元へ向かう。
「ばあちゃん!どっち!?」
「あ…あっちだよ…。」
倒れ込んでいた老婆をスピサに頼み、教えられた方向へ酒を呑みながらラファガは駆けていく。
「大丈夫だよ、お婆さん。先輩に任せておけば。」
数分と経たないうちにラファガは犯人を見つけ、警備中の騎士に引き渡した。
「ほら、ばあちゃん。財布は大事に持っとけな?」
「ええ…ありがとう。」
すると老婆はスピサに耳打ちする。
「貴方の先輩、かっこいいわね。死んだお爺さんにそっくりだわ。」
それにスピサは自慢げに耳打ちで返す。
「そうでしょ?」
笑い合う老婆とスピサを見てラファガは不思議がった。
「あ、まずい。そろそろ時間だ…スピサ、走れる?」
時計を見たラファガがついてきて、と何処かに案内する。
「え、はい…!」
戸惑いながらはぐれないよう、後ろを走るスピサ。
二人は茂みを掻き分け、小さな丘に着く。
「間に合ったかな…。」
そのとき。
大きな音と共に、花火が夜空に咲いた。
「な?此処、特等席だろ?」
振り返ったラファガの笑顔は何より眩しくて、花火など霞んで最早背景でしかなかった。
と同時に、自分も咲いた後の火花のようにこの恋を口にすれば散るだけなのだと、思い知らされたようで涙目になった。
「え!!?スピサ!!?泣いてる!!!??」
「あー、余りにも花火が綺麗なので…。」
「なんだ…それなら良かった。」
暫く咲き続ける花火の下で、二人はただただ今日の余韻に浸っていた───。
後日。
ロンタゼルス…もとい、ヒィの采配で夏祭りに二人だけ非番にしたのにも関わらず、手も繋いでいない事実を耳にし、不満を垂らしながら食事をしたのは言うまでもない。
ラファガがスピサを呼び出した。
いつにも増しておどおどとした態度だ。
「よわよわ先輩~。オレも暇じゃないんですけど?」
舞い上がる内心とは裏腹にスピサは急かす。
覚悟を決めてラファガは用件を口にする。
「あ、明日さ…。一緒に、夏祭りっ…行かない…?」
しどろもどろになりながらも、勿論嫌じゃなかったら、と言葉を足す。
ラファガの用件を聞いた瞬間、スピサの頭は真っ白になった。
承諾はしたものの、どんな言葉を返したのか自分でも覚えていない程に。
ラファガと別れても未だ冷静になれないスピサは、どうせ他の後輩も誘ったのだろうと疑り、普段口も聞かない同僚が群れを成していたので裏を取った。
だが誰しもがそんなことは知らない、そもそもその日は二人以外は警備に当たる筈だと声を揃えた。
その後、スピサの寮室では───。
「夏祭りって何!?二人きりって何!!?」
元貴族のスピサはそもそも夏祭りがどういった催しなのか知らない。
その上ラファガと二人きりと考えると、頭の中が渋滞してパニック状態だ。
手には、街の本屋で買ってきたハウトゥー本が握りしめてある。
その本が恋人向けだとも知らずに、読み進めていく。
「浴衣?っていうのを着るものなのか…へぇ、意外と楽しそう…。」
しかしある頁を開いた途端にスピサの頭はとうとう爆発する。
そこには、
"花火の中、キスを交わしたカップルは永遠の愛が実るかも!?"
「いやいやいや!!!!ないから!!!きききキス…とか…ないし…カップルでさえ、ないし…。」
徐々に小さくなる声には寂しさが混じっていた。
一方、ラファガの寮室で───。
「はぁあ~…スピサに無理させちゃったかなぁ…?」
偶然か、彼が手にしていたのもスピサが読んでいた本と全く同じものだった。
そして例の頁を開くと、ラファガの頭も爆発した。
「なっ…キ…!!?いや…スピサは気持ち悪いだろうし、そういうの。デート…でもないしね…。」
ラファガは、スピサが嫌がるようなことだけはしたくないのだ。
本当は二人きりで夏祭りに行くのも、自分勝手だったかもしれない。
「「あーもう、どうすればいいんだー!?」」
二人の部屋から放たれた叫びは、寮にいた他の騎士達を困惑させたという。
夏祭り当日。
微かな記憶を辿り、待ち合わせ場所に着いたスピサはラファガと無事合流する。
「あ、スピサ。良かった、おれだけ浴衣で浮かれちゃったかと思った…。」
ラファガはシンプルな黒い浴衣に赤い帯を締めており、彼の大人びた魅力を更に映えさせていた。
「かっ…、よわよわ先輩にしては、まぁ馬子にも衣装ってやつなんじゃないですか…。」
本音が漏れかけたスピサは、柄の入った紫の浴衣に白の帯、襟足を小さく結わえて、どこか色気漂う佇まいだ。
「ありがとう、スピサもすごく…綺麗だよ。」
褒め合ったものの、照れくさくなった二人に少しの沈黙が流れる。
「す、スピサは夏祭り初めてでしょ?案内するから、行こう。」
「あ、ちょっと待って下さいよ!?」
スピサは見たことのない世界に迷い込んだように、あれは?これは?と目を輝かせてラファガに聞いてくる。
楽しんでいるスピサの様子にラファガも嬉しくなる。
「これが綿あめですか…!甘くてふわふわで口に入れるとすぐなくなっちゃうんですね…!!」
露店で買った綿あめを食べているスピサを微笑ましく見つめるラファガ。
小さな口で一生懸命頬張っているその姿がどうしようもなく愛おしく、しかし"すぐなくなる"という言葉に自分もそのような存在であって欲しくない儚い気持ちとで葛藤していた。
「きゃあああ!!ひったくりいい!!!」
「「!!!」」
甘い時間は突如として壊され、騎士として声の元へ向かう。
「ばあちゃん!どっち!?」
「あ…あっちだよ…。」
倒れ込んでいた老婆をスピサに頼み、教えられた方向へ酒を呑みながらラファガは駆けていく。
「大丈夫だよ、お婆さん。先輩に任せておけば。」
数分と経たないうちにラファガは犯人を見つけ、警備中の騎士に引き渡した。
「ほら、ばあちゃん。財布は大事に持っとけな?」
「ええ…ありがとう。」
すると老婆はスピサに耳打ちする。
「貴方の先輩、かっこいいわね。死んだお爺さんにそっくりだわ。」
それにスピサは自慢げに耳打ちで返す。
「そうでしょ?」
笑い合う老婆とスピサを見てラファガは不思議がった。
「あ、まずい。そろそろ時間だ…スピサ、走れる?」
時計を見たラファガがついてきて、と何処かに案内する。
「え、はい…!」
戸惑いながらはぐれないよう、後ろを走るスピサ。
二人は茂みを掻き分け、小さな丘に着く。
「間に合ったかな…。」
そのとき。
大きな音と共に、花火が夜空に咲いた。
「な?此処、特等席だろ?」
振り返ったラファガの笑顔は何より眩しくて、花火など霞んで最早背景でしかなかった。
と同時に、自分も咲いた後の火花のようにこの恋を口にすれば散るだけなのだと、思い知らされたようで涙目になった。
「え!!?スピサ!!?泣いてる!!!??」
「あー、余りにも花火が綺麗なので…。」
「なんだ…それなら良かった。」
暫く咲き続ける花火の下で、二人はただただ今日の余韻に浸っていた───。
後日。
ロンタゼルス…もとい、ヒィの采配で夏祭りに二人だけ非番にしたのにも関わらず、手も繋いでいない事実を耳にし、不満を垂らしながら食事をしたのは言うまでもない。
