InsteadLost
「んん…またこの夢か…。」
折角の小鳥の囀りも台無しだ。毎朝のように悪夢を見る。魔物に追いかけられる夢を。
顔を洗いに洗面台へ向かう。
鏡に映るこの顔も、いまいちピンと来ない───自分の顔のはずなのに。
俺の名前はユウジ。それ以外は"覚えてない"。
ある日、此処カイスの街の外れの森で目が覚めたら倒れていた。
記憶のない俺を街の人達は敬遠してたけど、行く宛のない俺をこの国所属のカイス護衛兵へと勧誘してもらったお陰で、何とか寮に住ませてもらう事が出来たし、今は護衛兵見習いとして修行して二ヶ月になる。
『呼び出しする。ユウジ、今すぐ兵士長室へ来るように。』
修行部屋にアナウンスが流れる。
「え、俺、何かしたか…?」
叱られる覚悟で兵士長室へ向かう。足取りは重かった。
だが向かう途中で何人かの先輩見習い兵士が同行することを知って少し安心した。
「よく集まってくれた。皆にはこれから見習い卒業試験を与える。」
「なっ!?しかしこの者はまだ入隊して二ヶ月ですよ!?」
「贔屓なのでは…?」
「黙れ。」
文句を吐いていた兵士達が兵士長の一言で渋々口を閉じた。
「試験の内容だが、各々一人で街の外に赴き魔物の首を持ち帰って来てもらう。勿論、対人での訓練と対魔物との実戦では天と地程違う。くれぐれも命を落とさぬように。解散。」
「はっ。」
部屋から出ていこうとすると兵士長に呼び止められた。
「あのー…俺やっぱ何かしましたかね…?」
「ユウジ。お前は光属性の可能性がある。」
属性とは誰もが持ちうる精霊の加護力で、火、水、地、風、そして稀に光、闇があると習った。
自分がまさかその稀な光属性を持っているとは思いもしなかった。
「光の特性は、恐るべき感覚の鋭さだ。それ故、お前はもう一人前になる可能性があると判断した。期待しているぞ。」
「はい。」
「お前は持ち金が無いだろうから装備品は用意しておいた。持っていくといい。」
「ありがとうございます。」
そして翌日、俺はカイスの街を発った。
折角の小鳥の囀りも台無しだ。毎朝のように悪夢を見る。魔物に追いかけられる夢を。
顔を洗いに洗面台へ向かう。
鏡に映るこの顔も、いまいちピンと来ない───自分の顔のはずなのに。
俺の名前はユウジ。それ以外は"覚えてない"。
ある日、此処カイスの街の外れの森で目が覚めたら倒れていた。
記憶のない俺を街の人達は敬遠してたけど、行く宛のない俺をこの国所属のカイス護衛兵へと勧誘してもらったお陰で、何とか寮に住ませてもらう事が出来たし、今は護衛兵見習いとして修行して二ヶ月になる。
『呼び出しする。ユウジ、今すぐ兵士長室へ来るように。』
修行部屋にアナウンスが流れる。
「え、俺、何かしたか…?」
叱られる覚悟で兵士長室へ向かう。足取りは重かった。
だが向かう途中で何人かの先輩見習い兵士が同行することを知って少し安心した。
「よく集まってくれた。皆にはこれから見習い卒業試験を与える。」
「なっ!?しかしこの者はまだ入隊して二ヶ月ですよ!?」
「贔屓なのでは…?」
「黙れ。」
文句を吐いていた兵士達が兵士長の一言で渋々口を閉じた。
「試験の内容だが、各々一人で街の外に赴き魔物の首を持ち帰って来てもらう。勿論、対人での訓練と対魔物との実戦では天と地程違う。くれぐれも命を落とさぬように。解散。」
「はっ。」
部屋から出ていこうとすると兵士長に呼び止められた。
「あのー…俺やっぱ何かしましたかね…?」
「ユウジ。お前は光属性の可能性がある。」
属性とは誰もが持ちうる精霊の加護力で、火、水、地、風、そして稀に光、闇があると習った。
自分がまさかその稀な光属性を持っているとは思いもしなかった。
「光の特性は、恐るべき感覚の鋭さだ。それ故、お前はもう一人前になる可能性があると判断した。期待しているぞ。」
「はい。」
「お前は持ち金が無いだろうから装備品は用意しておいた。持っていくといい。」
「ありがとうございます。」
そして翌日、俺はカイスの街を発った。