InsteadLost
目が覚めると窓から陽光が漏れていた。
ロンタゼルスは勢いよく身体を起こす。
「私は…一日も気を失っていたのか。」
「そうだよー、お寝坊さん?」
椅子にもたれているヒィが待ちくたびれた様子で読んでいた本を閉じた。
ヒィもブレイカの近辺で"偶然"シニエリウスらしき人物を見かけたらしい。
「ねぇ。ヒィちゃん。」
零れたその名は幼い頃に呼んでいたものだ。
最も、シニエリウスが死んでからは呼び捨てにするようにしていたが。
「隣に居た人、"アニキ"って呼んでた…。」
「うん。」
「──兄様は、もう私達の兄様じゃないのかなぁ…?」
ロンタゼルスは必死に涙をこらえ、震える声で問う。
そんな彼をただ受け止めるようにヒィは優しく微笑んだ。
「あの青年がアニキと慕っているんだ。我らが、ロンたんが兄と慕って何が悪い。」
──ああ、やっぱりヒィちゃんは強いなぁ…。
ロンタゼルスは再びそう思う。
シニエリウスが死んだと伝えたときも、翌日にはいつもの笑顔で支えてくれた。
ロンタゼルスは剣を取り、ブレイカで国王のみ乗馬を許されるユニコーンを用意し、少しの間国を離れることにした。
慌てた近衛が止めようとしたが、
「大切な人を、探しに行くのだ。」
国を頼む、と嬉々として出掛けた。
話したいことは沢山あるが、伝えたいことはひとつだけだ。
その想いを胸に、大陸を周った。
四日後。
「見つけた、兄様。」
「…何の御用で?国王様。」
依然シラを切られるが、ロンタゼルスの中で目の前の彼は兄だと確信している。
「迎えに来たんだ。」
「流石にもう隠せないか…。だが俺を連れ戻してぇなら、力づくで連れていくんだな。」
そう言ってシニエリウスは鞭を取り出す。
全く、兄様は子供の頃と変わってないなぁ。
応じるようにロンタゼルスも剣を構えた。
シニエリウスは鞭を力任せに打ち付けてくる。
まるで行き場の無い悲しみをぶつけてきているようにロンタゼルスは感じた。
重い一撃一撃をロンタゼルスは剣で流す。
これは兄と弟の"会話"だ。
──どれだけ"会話"を続けただろうか。
二人共、息が乱れていた。
「もう、もういい。終わらせるぞ、ロンタゼルス。」
シニエリウスは鞭を剣に絡ませる。
剣はびくとも動かない。
このままだと剣を取られて接近戦に持ち込まれ、ナイフで刺されるのが落ちだろう。
だがロンタゼルスはその場に剣を深く突き刺し、自らシニエリウスの元へ駆ける。
「お前…死にてぇの───!?」
言い終わる前に、ロンタゼルスはシニエリウスに抱きついていた。
大粒の涙を隠すことなく、ただ伝える。
「兄様…もう一度、私の兄様になってよ…!」
泣きじゃくる弟に、兄はただ狼狽える。
「盗賊を辞めなくてもいい、ただ、私を兄様の帰る場所にしてよ…。ずっと、憧れてた兄様の。」
その言葉を聞いて、シニエリウスの胸につかえていた黒く重い何かが溶けていく気がした。
ロンタゼルスが、俺に憧れてた…?
こんな俺のことを慕ってくれてたのか。
俺は今まで何やってたんだろうか?
ったく、仕方ねぇな。
諦めたように、一言。
「…ただいま、ロンタゼルス。」
「おかえり、兄様。」
ロンタゼルスは勢いよく身体を起こす。
「私は…一日も気を失っていたのか。」
「そうだよー、お寝坊さん?」
椅子にもたれているヒィが待ちくたびれた様子で読んでいた本を閉じた。
ヒィもブレイカの近辺で"偶然"シニエリウスらしき人物を見かけたらしい。
「ねぇ。ヒィちゃん。」
零れたその名は幼い頃に呼んでいたものだ。
最も、シニエリウスが死んでからは呼び捨てにするようにしていたが。
「隣に居た人、"アニキ"って呼んでた…。」
「うん。」
「──兄様は、もう私達の兄様じゃないのかなぁ…?」
ロンタゼルスは必死に涙をこらえ、震える声で問う。
そんな彼をただ受け止めるようにヒィは優しく微笑んだ。
「あの青年がアニキと慕っているんだ。我らが、ロンたんが兄と慕って何が悪い。」
──ああ、やっぱりヒィちゃんは強いなぁ…。
ロンタゼルスは再びそう思う。
シニエリウスが死んだと伝えたときも、翌日にはいつもの笑顔で支えてくれた。
ロンタゼルスは剣を取り、ブレイカで国王のみ乗馬を許されるユニコーンを用意し、少しの間国を離れることにした。
慌てた近衛が止めようとしたが、
「大切な人を、探しに行くのだ。」
国を頼む、と嬉々として出掛けた。
話したいことは沢山あるが、伝えたいことはひとつだけだ。
その想いを胸に、大陸を周った。
四日後。
「見つけた、兄様。」
「…何の御用で?国王様。」
依然シラを切られるが、ロンタゼルスの中で目の前の彼は兄だと確信している。
「迎えに来たんだ。」
「流石にもう隠せないか…。だが俺を連れ戻してぇなら、力づくで連れていくんだな。」
そう言ってシニエリウスは鞭を取り出す。
全く、兄様は子供の頃と変わってないなぁ。
応じるようにロンタゼルスも剣を構えた。
シニエリウスは鞭を力任せに打ち付けてくる。
まるで行き場の無い悲しみをぶつけてきているようにロンタゼルスは感じた。
重い一撃一撃をロンタゼルスは剣で流す。
これは兄と弟の"会話"だ。
──どれだけ"会話"を続けただろうか。
二人共、息が乱れていた。
「もう、もういい。終わらせるぞ、ロンタゼルス。」
シニエリウスは鞭を剣に絡ませる。
剣はびくとも動かない。
このままだと剣を取られて接近戦に持ち込まれ、ナイフで刺されるのが落ちだろう。
だがロンタゼルスはその場に剣を深く突き刺し、自らシニエリウスの元へ駆ける。
「お前…死にてぇの───!?」
言い終わる前に、ロンタゼルスはシニエリウスに抱きついていた。
大粒の涙を隠すことなく、ただ伝える。
「兄様…もう一度、私の兄様になってよ…!」
泣きじゃくる弟に、兄はただ狼狽える。
「盗賊を辞めなくてもいい、ただ、私を兄様の帰る場所にしてよ…。ずっと、憧れてた兄様の。」
その言葉を聞いて、シニエリウスの胸につかえていた黒く重い何かが溶けていく気がした。
ロンタゼルスが、俺に憧れてた…?
こんな俺のことを慕ってくれてたのか。
俺は今まで何やってたんだろうか?
ったく、仕方ねぇな。
諦めたように、一言。
「…ただいま、ロンタゼルス。」
「おかえり、兄様。」
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