InsteadLost
勇司とクレイがパウジェに会っている一方で、誠也とヴェルムは魔術大会のエントリーをしに来ていた。
コロシアムは人でごった返している。
誠也はヴェルムに付き合ってもらい、受付に並ぶ。
「セイヤ、そんなに大会が楽しみなのね。口角が上がってるのを隠しきれていないわ。」
ヴェルムが指摘すると誠也は少し照れた。
なんだかんだでエントリーを済ませ、建物のあちこちを見て回っている時だった。
「フン、今年も揃いも揃って腑抜け面な輩ばかりね。」
声がした方を見てみる。そこに腕組みしながら立っていたのは、生気の感じられない冷たい雰囲気の少女だった。
周囲の誰もがひそひそ話を始めた、"零下の魔女"が来た、と。
「ロンさんが言っていたのはあの女の子か。」
そしてどういうわけか、此方へと向かってくる少女。
「アナタ。その出で立ち、"才を持つ愚者"ね。」
敢えて、"両術者"ではなく"才を持つ愚者"という言葉を選んだ彼女。
誠也は両術者差別の考えを持つ人間なのではと推測した。
「愚者如きが大会に出場しようだなんて…。中途半端に魔術をかじった邪道が、調子に乗らないで。」
「そんなことはないわ、セイヤの魔術は凄いんだから。」
「魔術も使えない無能は口を出さないで。」
とても冷酷な表情、まさに氷そのもののようだ。
「ふふ…随分俺に負けることにビビってるみたいだね。」
推測は確信に変わった。
それと同時に誠也の短い堪忍袋の緒は切れた。
「は?誰が。そもそもワタシに辿り着くには、決勝まで勝ち上がる必要があると分かってる?」
しかし誠也は既に手のつけられない状態だった。
影の落ちた顔で笑いながら毒を吐く。
「いいよいいよ。"両術者"を差別してること、俺の仲間を差別したこと。決勝で君に勝って泣いて謝らせてやるよ、ふふ。」
周囲でその発言を聞いた他の出場者も誠也を不満げな表情で睨みつけている。
少女、もとい零下の魔女は、初戦敗退の慰めの花くらいは送ると捨て台詞を吐いて人混みに消えていった。
誠也は未だ怒りで興奮している。
それを必死になだめたヴェルムは内心、勇司の方について行けばよかったと誰にも悟られず後悔しているのだった───。
コロシアムは人でごった返している。
誠也はヴェルムに付き合ってもらい、受付に並ぶ。
「セイヤ、そんなに大会が楽しみなのね。口角が上がってるのを隠しきれていないわ。」
ヴェルムが指摘すると誠也は少し照れた。
なんだかんだでエントリーを済ませ、建物のあちこちを見て回っている時だった。
「フン、今年も揃いも揃って腑抜け面な輩ばかりね。」
声がした方を見てみる。そこに腕組みしながら立っていたのは、生気の感じられない冷たい雰囲気の少女だった。
周囲の誰もがひそひそ話を始めた、"零下の魔女"が来た、と。
「ロンさんが言っていたのはあの女の子か。」
そしてどういうわけか、此方へと向かってくる少女。
「アナタ。その出で立ち、"才を持つ愚者"ね。」
敢えて、"両術者"ではなく"才を持つ愚者"という言葉を選んだ彼女。
誠也は両術者差別の考えを持つ人間なのではと推測した。
「愚者如きが大会に出場しようだなんて…。中途半端に魔術をかじった邪道が、調子に乗らないで。」
「そんなことはないわ、セイヤの魔術は凄いんだから。」
「魔術も使えない無能は口を出さないで。」
とても冷酷な表情、まさに氷そのもののようだ。
「ふふ…随分俺に負けることにビビってるみたいだね。」
推測は確信に変わった。
それと同時に誠也の短い堪忍袋の緒は切れた。
「は?誰が。そもそもワタシに辿り着くには、決勝まで勝ち上がる必要があると分かってる?」
しかし誠也は既に手のつけられない状態だった。
影の落ちた顔で笑いながら毒を吐く。
「いいよいいよ。"両術者"を差別してること、俺の仲間を差別したこと。決勝で君に勝って泣いて謝らせてやるよ、ふふ。」
周囲でその発言を聞いた他の出場者も誠也を不満げな表情で睨みつけている。
少女、もとい零下の魔女は、初戦敗退の慰めの花くらいは送ると捨て台詞を吐いて人混みに消えていった。
誠也は未だ怒りで興奮している。
それを必死になだめたヴェルムは内心、勇司の方について行けばよかったと誰にも悟られず後悔しているのだった───。