InsteadLost

勇司達はクレイに連れられ、場所を移した。
ここなら一族の目も届かない、と。

着いたのは、大きな採掘場。
あちこちに透き通る青の鉱石があり、眩しいほどに輝いている。
松明も必要なさそうだ。

「爺。お邪魔するわ。」
クレイが呼びかけたのはたった一人で採掘していた白髪の老父。
「おや、クレイちゃん…とお友達かな?ゆっくりしてってね。」
老父が汗を拭きながら、振り返るとその容姿がうかがえた。
短く尖った耳に比較的低い身長。この特徴はドワーフだ。
「爺は凄いのよ、一人で採掘した鉱石を一人で鍛冶で加工しちゃうんだから。」
合点が行った。このドワーフと親しいから、エルフであるヴェルムを見ても差別しなかったのだ。

「んで、何でクレイは出来損ないなんて言われてるんだ?」
勇司は、率直に本題へ入った。
クレイは重く口を噤んでいたが、勇司の真っ直ぐな視線に負けたのか、溜息を一つ吐いてから話し始めた。
「黄金の血、って知ってるかしら?」
「ん?血が光んのか?」
「O型、Rh nullの血液型だと誰にでも輸血できるから、黄金の血なんて呼ばれてる。神の使いの一族の人間はО型Rh nullしか存在を許されないのよ。…でもあたしは、B型Rh null。生まれついての出来損ないってワケ。」

少しの沈黙の後、勇司が口を開く。
「…え?それだけ?」
「そう。それだけであたしの居場所は無いのよ。あたしなりに努力もして、幻術だけじゃなくて結界や浄化、魂の扱い方も少しは覚えたんだけどね。」
思い出したようにクレイは小声で言った。
「そういえば…。まだ小さい頃、あんたと同じことを言ってきた奴がいたわね…ああ、リレラエドか。」

「皆同じとか、つまんねーじゃん。一人一人違うから、友達にも仲間にもなれるんだろ。」
勇司に次いで誠也も頷く。
「そうそう。人間界の言葉でもあるんだよ、『皆違って皆いい』ってね。」
ヴェルムはクレイに抱き着く。
「私もありのままのクレイが大好きよ?」

「芯が強くて、努力家なのがクレイだけの個性だろ!それだけでお前はいいんだよ!」
勇司が笑う。
何故か、その言葉と笑顔にクレイの胸は熱くなっていた。


───その頃、黙の家のとある部屋にて。
「あの出来損ないが人間如きに加担するようであれば、お前が掟において殺すんだぞ。」
「勿論承知しております。」

「任務は確実にな、───リレラエド。」
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