InsteadLost

一同は地図を使って見つけた洞窟を探索していた。
炎の魔術を松明代わりにし、コンフィとイネルティアが先導、誠也と勇司とヴェルムが背後の警戒をしながら進む。

「それにしても、洞窟で戦う魔物は地上の魔物とは強さが違うのね。」
ここまで進んできて暗闇から魔物に襲撃されることが何度もあったが今まで戦ってきた魔物とは強さが段違いに思えた。
更に、海では他の海賊だけでなくクラーケンなどの海域特有の魔物も出るという。
その結果か、イネルティアはいつもの姿からは想像出来ない程、とても強く頼もしかった。


イネルティアの感覚を頼りに進むこと数十分───。
「…見つけた。」
岩間に行先が見えないくらい暗い階段を発見した。

狭く、螺旋状に長く続く階段を下りていく。
やっと光が見えてきたと思うと、広間に出た。
そこには何人もの薄汚れた姿の少年少女がおり、それぞれ手元で何やら作業をしているようだ。
イネルティアがそのうちの一人の近づき話しかける。

「おい、坊主。何やってる?」
彼女に気付いた少年が煩わしそうに答えた。
「なんだ、新しい冒険者か。僕らは誘拐された子供。だけどちゃんと食事を与えられてる、この頭蓋骨を面にする作業をこなす代わりにね。」
それを聞いたイネルティアは真剣な表情で少年の頭を雑に撫でた。
「…面倒だから、救ってやる。」

「期待はしないでおく。」
少年は作業に戻る直前に広間の奥を指差した。

奥に行くにつれて悪寒を感じる冷気のようなものが身体を纏った。
これは亡魔の王の時と同じものだった。

道中、足元に骨、主に頭蓋骨がごろごろと転がっていた。
暫く歩くと骨まみれの広間に出る。
その中心には巨大な恐竜のようなものの骨に座っている少女の姿。

「アレが乗ってんの、ありゃぁこの洞窟の元々のヌシだな。」

こちらに気付いた少女が勇司達の顔をひとりひとりまじまじと見る。
そして急に誠也を指差し、黄色い声をあげた。

「貴方よ貴方!貴方に惚れちゃった♪貴方の面が欲しいわ!」
そう言った少女は、頭に着けていた頭蓋骨の面を外し、捨てた。
「もう飽きちゃったし、これは要らないわね。」
その表情は冷酷なものだった。
と思ったら今度は頬を赤らめ誠也を見ながら饒舌になった。
「だいじょうぶよ?心配しなくても、傷ひとつ付けずに、痛みなく殺してあげるわ。そして私達は一緒になるの…♡」
勇司が
「そんなこと、させるかよ!」
と叫ぶと、今度は鬱陶しそうな顔になった。

「は?不細工は黙ってて。」

実に感情豊かな魔人だ。

「総員、戦闘態勢。コイツをぶっとばすぞ。」
「はい!」

「やれやれ…。どうしても殺る気なのね。」
少女は座っていた骨からスカートの裾をふわりとさせながら降り、
「遊んでアゲル♡」
牙を剝いた。
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