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指先の熱

「あら…」


私の頬に手を這わせる先輩が不思議そうに見つめてくる。


「アンタ…手をかけてないって言ってた割に綺麗な肌してるわね。」

『え、そうですか?』


空いた反対の手には宝石のような瓶が握られているが、恐らく先輩の愛用品と思しき化粧水だろう。

這わせた手が一度離れ、今度はその指先に化粧水を含ませて頬に這わせていく。


「羨ましいわねホント…」

『…先輩の方が綺麗だと思いますけど』

「当たり前じゃない、アタシを誰だと思ってるの?」


少しも抜け目なく整えられた肌を見てそう言えば、先輩にバッサリと切り捨てられてしまった。
そこでようやく同じ目線の高さであること、ひどく顔の距離が近いことに気が付いて、じわりと頬の内側が熱くなった。

瓶から出した時は冷えていた化粧水はすっかり体温ほどに温くなり、むしろ今は指先から伝わる熱なのか私の体温なのか分からないくらい熱い。


「…アンタねぇ、」


化粧水を馴染ませ終えた先輩の指が離れると、呆れたようなため息をつかれる。


「今どんな顔してるか分かってるの?」

『え…?』

「これがサバナクローの野獣共だったらとっくに襲われてるわよ。」


先輩の親指が私の唇の上をなぞる。
つつ、と触れるか触れないかのギリギリさに背筋がゾクリと粟立つ感覚がした。
その恥ずかしさに顔を背けようとすると、ぐっと人差し指に顎を持ち上げられて、身体が固まる。
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