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指先の熱

『後でちゃんとしますからグリムを…』

「あの毛玉ならほっとけば自分から帰ってくるでしょ。それより、アンタ仮にも女の子なんだからちゃんとしなさいよ!」


ホラいらっしゃい、とヴィル先輩は私の手首を優しく握ってどこかへと導いた。


『あの、ヴィル先輩…?』

「このアタシがここまでするなんて普通あり得ないわよ。」


導かれた先はヴィル先輩の自室。
先輩に促され、部屋にあった豪華なソファーに恐る恐る座ると目の前に綺麗な小瓶を突き付けられた。


「アタシのお気に入りのコラーゲンドリンクよ。安心なさい、毒じゃないから。」

『ありがとうございます…』


よく冷えたドリンクはグリムを探して走り回った身体を冷まし、ラベンダーに似た甘い香りが心を落ち着かせた。


「さ、次は髪を乾かすわよ。」


そう言われるのと同時に温かい風が髪を揺らした。
先輩の優しい手にサラサラと撫でられて、その心地よさに目を閉じる。


「いい?髪が濡れたままだとキューティクルが剥がれちゃうの、だからちゃんとすぐ乾かすのよ。」

『はぁ…』

「何よそのやる気のない返事。」


カチ、とドライヤーの風が消えたと思ったら、先輩は私の前にやってきて大きな手のひらで私の頬に触れた。
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