ドラマティックな恋仕方
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シンジュク中央病院の診察室。
休診時間のそこには患者の姿はなく、1人の医師と看護師が2人きりだった。
その医師は神宮寺寂雷、そして看護師は玲香。
「…本当に辞めてしまうんだね。」
『申し訳ありません…。神宮寺先生にはとてもお世話になっていたので、どうしても最後にご挨拶がしたくて…』
「あのような事情があるのなら仕方ないよ。私としては、君のような優秀なナースを失うのは惜しいけどね…」
元恋人の浮気発覚から玲香は勤務していた病院を辞めた。
彼も同じ病院で働く以上鉢合わせは避けられず、私情で仕事に支障をきたしかねないと判断したからだ。
そして引っ越しが落ち着いた頃に、玲香は最低限の関係者にだけ挨拶に向かい現在に至る。
『先生、今までお世話になりました。』
「私こそ、短い間だったけどありがとう。何か相談があればいつでも来なさい。」
元恋人に浮気されて鉢合わせしたくない、こんな身勝手な理由でも快く送り出してくれる寂雷の懐の深さを感じ、玲香は改めて深々と頭を下げた。
「…無粋なことを聞いて申し訳ないけど、その彼のことはどうするんだい?このまま何も話さないのは良くないよ。」
『…いいんです、話すことなんてありませんから。失礼します。』
作り笑いを向けて診察室を去った玲香に寂雷は己の質問を後悔した。
「(やはり彼女を傷付けてしまっただろうか…、しかしこのままでは弥勒院君にとっても良いことはないし…。)」
1人残された診察室で悩む寂雷は、廊下に響くけたたましい足音を特に気にすることはなかった。
それが数分後に修羅場の原因と化すことも知らずに。
『(荷物はこれで全部ね…。よし、帰ろ!貯金があるうちに次の仕事見つけないと…万年人手不足なんだし医療系ならすぐ決まるわよね。)』
「あの、弥勒院先輩…」
空になったロッカーを閉めながら転職先を考える玲香の背後からか細い声で名前を呼ばれた。
振り返ると声の主は小柄な看護師で、おどおどした様子で玲香を上目遣いで見上げている。
『…確か迫田さんよね?今まで話したことなかったけど、何?』
確かに玲香は彼女と話したことはない。
ただ存在は知っている。
怯えた小動物のような彼女が浮気相手で全ての元凶であることも。
何のために声をかけに来たのか、牽制か?言い訳か?
玲香は威圧するように冷めた目で迫田を見下ろす。
「ごめんなさい…!」
『何が「ごめんなさい」なの?』
「あの、その…翔大さんは悪くないんです!!わ、私が…好きになったから!私が悪いんです!!」
途切れ途切れに言葉を繋ぐ迫田はそう言い終わると同時に泣き出した。
小動物のような保護欲を掻き立てる雰囲気と弱気な性格、なるほど男受けは良さそうな女だと玲香は泣き崩れる迫田を冷静に観察する。
迫田が許しも罵りもしない玲香に恐る恐る涙で濡れた目で見上げると、玲香は彼女のほうを一切見向きもせずに身支度を整えて更衣室を後にしようとしていた。
「あ、の…弥勒院せんぱい…?」
『アイツ、よくスマホ壊すのよね…。おかげで連絡つかなくなることしょっちゅうなの。』
「え、え…?」
『あとアイツ優柔不断だから、何かに迷い出したらアナタが決めないと一生決まらないからね。』
「あ、あの…何のことですか…?」
淡々と話を進める玲香に怯える迫田。
玲香はそんな迫田に優しく微笑み、冷たく言い放った。
『引き継ぎ、よろしくね。』
玲香の微笑みは優しいが目には一切の感情がなく、まるで仕事の引き継ぎを頼むかのように淡々とした態度だった。
迫田の傍をすり抜け更衣室を後にする玲香に我に返り、迫田はなおも玲香に食い下がる。
「先輩…待って!」
『何、まだ分からないことがあるの?』
「引き継ぎって…そんな言い方しなくても…!」
玲香が言う引き継ぎとは、仕事のことか、はたまた男のことか。
迫田が問いただそうとしたその時、
「玲香…?」
それは玲香にとって二度と姿を見たくもない相手の声であり、二度と聞きたくもない声でもあった。
今、修羅場が始まる。
休診時間のそこには患者の姿はなく、1人の医師と看護師が2人きりだった。
その医師は神宮寺寂雷、そして看護師は玲香。
「…本当に辞めてしまうんだね。」
『申し訳ありません…。神宮寺先生にはとてもお世話になっていたので、どうしても最後にご挨拶がしたくて…』
「あのような事情があるのなら仕方ないよ。私としては、君のような優秀なナースを失うのは惜しいけどね…」
元恋人の浮気発覚から玲香は勤務していた病院を辞めた。
彼も同じ病院で働く以上鉢合わせは避けられず、私情で仕事に支障をきたしかねないと判断したからだ。
そして引っ越しが落ち着いた頃に、玲香は最低限の関係者にだけ挨拶に向かい現在に至る。
『先生、今までお世話になりました。』
「私こそ、短い間だったけどありがとう。何か相談があればいつでも来なさい。」
元恋人に浮気されて鉢合わせしたくない、こんな身勝手な理由でも快く送り出してくれる寂雷の懐の深さを感じ、玲香は改めて深々と頭を下げた。
「…無粋なことを聞いて申し訳ないけど、その彼のことはどうするんだい?このまま何も話さないのは良くないよ。」
『…いいんです、話すことなんてありませんから。失礼します。』
作り笑いを向けて診察室を去った玲香に寂雷は己の質問を後悔した。
「(やはり彼女を傷付けてしまっただろうか…、しかしこのままでは弥勒院君にとっても良いことはないし…。)」
1人残された診察室で悩む寂雷は、廊下に響くけたたましい足音を特に気にすることはなかった。
それが数分後に修羅場の原因と化すことも知らずに。
『(荷物はこれで全部ね…。よし、帰ろ!貯金があるうちに次の仕事見つけないと…万年人手不足なんだし医療系ならすぐ決まるわよね。)』
「あの、弥勒院先輩…」
空になったロッカーを閉めながら転職先を考える玲香の背後からか細い声で名前を呼ばれた。
振り返ると声の主は小柄な看護師で、おどおどした様子で玲香を上目遣いで見上げている。
『…確か迫田さんよね?今まで話したことなかったけど、何?』
確かに玲香は彼女と話したことはない。
ただ存在は知っている。
怯えた小動物のような彼女が浮気相手で全ての元凶であることも。
何のために声をかけに来たのか、牽制か?言い訳か?
玲香は威圧するように冷めた目で迫田を見下ろす。
「ごめんなさい…!」
『何が「ごめんなさい」なの?』
「あの、その…翔大さんは悪くないんです!!わ、私が…好きになったから!私が悪いんです!!」
途切れ途切れに言葉を繋ぐ迫田はそう言い終わると同時に泣き出した。
小動物のような保護欲を掻き立てる雰囲気と弱気な性格、なるほど男受けは良さそうな女だと玲香は泣き崩れる迫田を冷静に観察する。
迫田が許しも罵りもしない玲香に恐る恐る涙で濡れた目で見上げると、玲香は彼女のほうを一切見向きもせずに身支度を整えて更衣室を後にしようとしていた。
「あ、の…弥勒院せんぱい…?」
『アイツ、よくスマホ壊すのよね…。おかげで連絡つかなくなることしょっちゅうなの。』
「え、え…?」
『あとアイツ優柔不断だから、何かに迷い出したらアナタが決めないと一生決まらないからね。』
「あ、あの…何のことですか…?」
淡々と話を進める玲香に怯える迫田。
玲香はそんな迫田に優しく微笑み、冷たく言い放った。
『引き継ぎ、よろしくね。』
玲香の微笑みは優しいが目には一切の感情がなく、まるで仕事の引き継ぎを頼むかのように淡々とした態度だった。
迫田の傍をすり抜け更衣室を後にする玲香に我に返り、迫田はなおも玲香に食い下がる。
「先輩…待って!」
『何、まだ分からないことがあるの?』
「引き継ぎって…そんな言い方しなくても…!」
玲香が言う引き継ぎとは、仕事のことか、はたまた男のことか。
迫田が問いただそうとしたその時、
「玲香…?」
それは玲香にとって二度と姿を見たくもない相手の声であり、二度と聞きたくもない声でもあった。
今、修羅場が始まる。