Dawn of the Felines
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連絡が付かなくなった兄を探すべく母親の反対を押し切り、イケブクロディビジョンに単身でたどり着いた美央。
勢いに任せて家を飛び出したものの、行く宛てもなく深夜のイケブクロディビジョンをさまよっていた。
『どうしよう…』
よく考えれば美央は兄の友人であること以外山田一郎がどんな人物かもよく知らない。
せめて山田一郎にはどこに行けば会えるのかさえ分かればもっと効率的に動くことができただろうけれど、兄を探すことに夢中な美央はそれすら考えていなかった。
『(山田一郎さん…ちょっとだけ調べたけど、本当にこんなすごい人に会えるのかな…?)』
元The Dirty Dawgのメンバー、山田一郎。
現在はチームを解散し、萬屋を経営しつつイケブクロディビジョンを取り仕切っている。
ネットで見聞きした情報だけでも山田一郎が美央にとって手の届かない人物であることは分かる。
そもそもこんな大物が本当に兄と友人だったのかすら疑わしくも思えてきた。
『(とりあえずこの萬屋ヤマダ…?ってとこに連絡すれば、一郎さんに会えるかも。
今日はもう遅いし、ネットカフェにでも泊まろう。…このままじゃお金もたないな。)』
無理を言って家を出ただけに、帰れば二度と兄に会うことは許されないだろう。
金銭面で母を頼ることはまず不可能と考えるべきだ。
ひとまず今日の寝床だけでも確保しようと美央が足を進めたその時、
「ぎにゃァァァァァァァ!!!???」
『きゃぁっ!!』
一歩踏み出した美央の足元に嫌な感触と共に断末魔のような鳴き声が鳴り響いた。
野良猫でも踏んだのかと恐る恐る足元を見ると、そこに居たのは野良猫ではなく人間…それも大の男だった。
「痛ってぇなオイ!!いきなり何しやがんだ!!?」
『え…え!?ひ、人?あの、その…ごめんなさい!倒れてたの全然気付かなくて…』
道の真ん中で人間が倒れているなど余程のことがない限り有り得ないのになぜ自分が怒鳴られているのだろうか。
半ば納得のいかない美央だったが、踏みつけた男の身なりを見て反論する気力が失せた。
伸びっぱなしの髪にボロボロの衣服。
恐らく彼には「余程のこと」があるからこそ道の真ん中で倒れていたのだろう。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ…
『…え?』
怒鳴りつけた次は何だと男のほうを見ると、男は今度こそ力尽きたのか再び膝から地面に崩れ落ちた。
「な、なあ…なんか食えるモン持ってない…?」
『え、え?今の音…、お腹空いてるんですか?』
ようやく美央の中で「ボロボロの身なりの男が空腹で力尽きて道で倒れていた。」という答えが導き出される。
見る限りまだ若いのにすかんぴんとは…と不憫に思った美央は無意識の内にコンビニに足を向けていた。
『はい。』
「え…?」
『お腹空いてるんですよね?これで足りるか分からないですけど…』
美央が男にコンビニ袋を差し出すと、男は素直に受け取り中身を確認する。
袋の中には数点の菓子パンと水が入っており、中身を見た途端に男の目の色が変わった。
「え!これ食っていいの?!」
『さっき踏んじゃったお詫びです。もう倒れないで下さいね。』
美央がそう言うと男は涙目になりながら何度も「ありがてぇ」「ありがてぇ」と呟き、受け取った菓子パンを食べ尽くした。
「いやー、助かったぜ!ありがとな…えっと、そういやお前名前は?」
『美央です、山崎美央。』
「俺は有栖川帝統だ。」
『ありすがわだいす…?』
変わった名前だと思ったが、それ以上に気になることがあり美央は口を開く。
『それで、どうして有栖川さんは道の真ん中でお腹空かせて倒れてたんですか?』
「よくぞ聞いてくれた…!聞くも涙、語るも涙…ギャンブルでボロ負けして一文無しになっちまったんだ!!!」
『…は?』
「いやけどな?ずっとボロ負けだったワケじゃねーんだよ、最初の店ではむしろ勝ってたんだよ!ただ次に行った賭場で倍に増やすはずが相手がイカサマしてきやがって有り金全部スられちまって…」
呆れて物も言えないとはこのことか、と美央は思った。
複雑な事情があるのかと思い助けたが、ただの自業自得。
助けた自分が間違っていたかもしれないとすら疑いたくもなる。
あまり関わると美央が今持っているなけなしの所持金までたかられるかもしれないと一抹の不安が過ぎり、そそくさと帝統に別れを告げる。
『あの、じゃあ私…遅いんでもう帰ります。』
「おいおい、こんな時間に女1人じゃ危ないだろ。家どこだ?近場まで送ってやっからよ。」
『い、いいです!ホントに近くなんで!!』
着いてこられては家に帰ると言ったのが嘘だとバレると美央は足早に帝統から走り去った。
『はぁ…なんか逃げたみたいになっちゃって有栖川さんに悪かったかな…。』
行き倒れの理由はどうあれ今回は人命に関わる事態だったが、現在の所持金に限りがある以上、これからはむやみに他人のための出費は避けると美央は誓った。
こうして帝統と別れてからネットカフェに辿り着き、畳1畳程の狭い個室で先行きの見えない不安にため息をつく。
『(とりあえず、今日のネカフェ代払ったら…明後日、いや明日までが限界か…それまでに山田一郎さんに会わないと!)』
色々なことがありすぎて疲れが一気に込み上げたのか、美央は横になるなりすぐに睡魔に襲われて眠りについた。
勢いに任せて家を飛び出したものの、行く宛てもなく深夜のイケブクロディビジョンをさまよっていた。
『どうしよう…』
よく考えれば美央は兄の友人であること以外山田一郎がどんな人物かもよく知らない。
せめて山田一郎にはどこに行けば会えるのかさえ分かればもっと効率的に動くことができただろうけれど、兄を探すことに夢中な美央はそれすら考えていなかった。
『(山田一郎さん…ちょっとだけ調べたけど、本当にこんなすごい人に会えるのかな…?)』
元The Dirty Dawgのメンバー、山田一郎。
現在はチームを解散し、萬屋を経営しつつイケブクロディビジョンを取り仕切っている。
ネットで見聞きした情報だけでも山田一郎が美央にとって手の届かない人物であることは分かる。
そもそもこんな大物が本当に兄と友人だったのかすら疑わしくも思えてきた。
『(とりあえずこの萬屋ヤマダ…?ってとこに連絡すれば、一郎さんに会えるかも。
今日はもう遅いし、ネットカフェにでも泊まろう。…このままじゃお金もたないな。)』
無理を言って家を出ただけに、帰れば二度と兄に会うことは許されないだろう。
金銭面で母を頼ることはまず不可能と考えるべきだ。
ひとまず今日の寝床だけでも確保しようと美央が足を進めたその時、
「ぎにゃァァァァァァァ!!!???」
『きゃぁっ!!』
一歩踏み出した美央の足元に嫌な感触と共に断末魔のような鳴き声が鳴り響いた。
野良猫でも踏んだのかと恐る恐る足元を見ると、そこに居たのは野良猫ではなく人間…それも大の男だった。
「痛ってぇなオイ!!いきなり何しやがんだ!!?」
『え…え!?ひ、人?あの、その…ごめんなさい!倒れてたの全然気付かなくて…』
道の真ん中で人間が倒れているなど余程のことがない限り有り得ないのになぜ自分が怒鳴られているのだろうか。
半ば納得のいかない美央だったが、踏みつけた男の身なりを見て反論する気力が失せた。
伸びっぱなしの髪にボロボロの衣服。
恐らく彼には「余程のこと」があるからこそ道の真ん中で倒れていたのだろう。
ぐぅぅぅぅぅぅぅ…
『…え?』
怒鳴りつけた次は何だと男のほうを見ると、男は今度こそ力尽きたのか再び膝から地面に崩れ落ちた。
「な、なあ…なんか食えるモン持ってない…?」
『え、え?今の音…、お腹空いてるんですか?』
ようやく美央の中で「ボロボロの身なりの男が空腹で力尽きて道で倒れていた。」という答えが導き出される。
見る限りまだ若いのにすかんぴんとは…と不憫に思った美央は無意識の内にコンビニに足を向けていた。
『はい。』
「え…?」
『お腹空いてるんですよね?これで足りるか分からないですけど…』
美央が男にコンビニ袋を差し出すと、男は素直に受け取り中身を確認する。
袋の中には数点の菓子パンと水が入っており、中身を見た途端に男の目の色が変わった。
「え!これ食っていいの?!」
『さっき踏んじゃったお詫びです。もう倒れないで下さいね。』
美央がそう言うと男は涙目になりながら何度も「ありがてぇ」「ありがてぇ」と呟き、受け取った菓子パンを食べ尽くした。
「いやー、助かったぜ!ありがとな…えっと、そういやお前名前は?」
『美央です、山崎美央。』
「俺は有栖川帝統だ。」
『ありすがわだいす…?』
変わった名前だと思ったが、それ以上に気になることがあり美央は口を開く。
『それで、どうして有栖川さんは道の真ん中でお腹空かせて倒れてたんですか?』
「よくぞ聞いてくれた…!聞くも涙、語るも涙…ギャンブルでボロ負けして一文無しになっちまったんだ!!!」
『…は?』
「いやけどな?ずっとボロ負けだったワケじゃねーんだよ、最初の店ではむしろ勝ってたんだよ!ただ次に行った賭場で倍に増やすはずが相手がイカサマしてきやがって有り金全部スられちまって…」
呆れて物も言えないとはこのことか、と美央は思った。
複雑な事情があるのかと思い助けたが、ただの自業自得。
助けた自分が間違っていたかもしれないとすら疑いたくもなる。
あまり関わると美央が今持っているなけなしの所持金までたかられるかもしれないと一抹の不安が過ぎり、そそくさと帝統に別れを告げる。
『あの、じゃあ私…遅いんでもう帰ります。』
「おいおい、こんな時間に女1人じゃ危ないだろ。家どこだ?近場まで送ってやっからよ。」
『い、いいです!ホントに近くなんで!!』
着いてこられては家に帰ると言ったのが嘘だとバレると美央は足早に帝統から走り去った。
『はぁ…なんか逃げたみたいになっちゃって有栖川さんに悪かったかな…。』
行き倒れの理由はどうあれ今回は人命に関わる事態だったが、現在の所持金に限りがある以上、これからはむやみに他人のための出費は避けると美央は誓った。
こうして帝統と別れてからネットカフェに辿り着き、畳1畳程の狭い個室で先行きの見えない不安にため息をつく。
『(とりあえず、今日のネカフェ代払ったら…明後日、いや明日までが限界か…それまでに山田一郎さんに会わないと!)』
色々なことがありすぎて疲れが一気に込み上げたのか、美央は横になるなりすぐに睡魔に襲われて眠りについた。